short story

□愛する痛みを与えて
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* 愛する痛みを与えて



哲学者に言わせると、物事に偶然はなく、全ては必然に成り立っているのだと言う。だとしたら君が私を愛している事も、私が君を愛している事も、全ては必然の成せる業なのか…



『どうしたの?ラウ』

醜い私の腕の中で、眠っていた姫君は、まだ眠そうな眼差しで私に問いかける。

『どうもしないさ』

私は例の如く白い嘘を吐く。
柔らかく、艶やかな髪を一束手に取り、キスを落とす。
いつもと変わらない姫君の香りが、私に安堵を与える。

ふと、姫君はシーツを纏い窓の向こうに見える七色の虹に瞳を輝かせる。

『うわ〜、今日も綺麗だな〜』

その無邪気さと、私の嘘とは違う白さに、私は改めて住む世界が違うと思い知らされる。
それでも、私は君を手放す事は出来そうもない。



ーーー貴方にも守りたいモノがあるじゃないですか!



いつか言われたキラ・ヤマトの言葉が脳裏に浮かぶ。

『知らぬさ、所詮人は、己が知る事しか知らぬ。』

『ぇ?何か言った?』

『何でもない。愛しているよ、姫君』

そっとキスを落とすと、パサリと乾いたシーツが音を立て、足元に舞い落ちる。
一糸纏わぬその身体は、陶器のように白くしなやかで、漆黒の闇を纏う私が触れても汚れぬ輝きを持つ。
より強く激しく窒息しそうな程、愛をその口に注ぎ込めば、その先に私を誘うように抱きついてくる。


その全てが愛おしい


角度を変え、何度も何度もキスを落とす。


あぁ、きみの肌に触れるだけで、こんなにも興奮するなんて…
私を満たすのは、君だけだ
君の全てを愛してあげられるのは私だけだ
早く私のところへ堕ちておいで





2014.9.25

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