Wise Person Story

□1:始まりの合図
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◇フィル 〜ルフィニアにて〜

ココは、周りを山と海で囲まれた大帝国
   ダイアナ国。
ダイアナ国の北側は、年中雪が降り積もり高く厳しい山がそびえ立っている。
北部に位地するのは宝石の都エルビアス。この都は周りを鉱山で囲まれ、年中沢山の珍しい宝石が採れる。
 他にも、森林や砂漠に囲まれている土地が
ありその全てをまとめているのは王都があるダイアナ国の中央に位地するルフィニアという都。雲一つ無い青空の下、ルフィニアの城下町の商店街で一人の少女が歩いていた。
 彼女の名前は『フィル』。戦闘技術に優れた部族、火族の一人である。


◇アエリス 〜???〜

 エルビアスから東に少し離れた所に位地する小さな国アエリアス。この国は魔力に優れた風の部族がいる。そして魔法を使える人物は数多く、また魔力の高い人物も沢山いた。
 その中でも最も魔術が優れた少女がいた。その名はアエリス。
この国は上下関係が厳しく、魔力が強ければ強いほど上の階級にいけるのだが…少女は上の階級にいることを断っていたのだ。
なんでも
「今この星で何かが起こる。だから自分は…ソレを見つけるために、答えを解くために私は旅に出ます。だから…階級はいりません。」
と言い残して何処かに行ってしまったらしく、今は何かを探しているらしい。


◇フィル 〜ルフィニアにて〜

   ギィィィィン!
 フィルはそびえ立つ大男に短剣---スティレットを向ける。
(なに…?こいつ)
さっき裏道な入ったら急にナイフで刺されそうになったのだ。
「あんた、誰?」
と言いながらも、スティレットで刺突を繰り返す。大男は、一瞬ピクリと反応したが、それだけだった。
軍用のナイフでフィルの刺突をはね返し、攻撃を仕掛けてくる。
 しかし、明らかにフィルの方が優勢だった。
「はぁ!」
大男を指差したその先から炎がとび出す。
ボンッ。ヒット。
大男の鼻先に炎の球がぶつかり、はじけた。
「ぬうおぉぉぉぅ」
のたうちまわる大男。フィルはその眼の前に足を
置き、
「もう一度問うわ。」
その言葉を放つ。
「あんた、誰?」
踏みつけた。顔を。
「うっっきゃああぁっ」
「答えないと…」
「わかった!わかったから、ゆるしてえぇっ!」
ごすっ。
「情けない声出してんじゃないわよ」
フィルはうんざりしたような顔で、「で?」と聞いた。大男は
「俺は…マリウス皇帝の配下だ。おまえを…さらってくるよう、言われたんだ…。」
「マリウス皇帝っ!?」
 マリウス皇帝とは、この帝国の王だ。かなりのわがままだが、リーダーとしての素質がある。
「なんで…?」


◇アエリス 〜エルビアスにて〜

 …それにしても…。アエリスは軽く自分の頭をかきながら眼前の男を見つめた。アエリスの前に倒れている男は、着ている服から見るに、国家軍隊の者だと分かる。
 ここは町の商店街の大通りである。
宝石で有名なエルビアスの中心地はとても栄えている。さまざまな店が大通りにそって両側に並んでいる。いつもは人であふれ返っているはずの大通りが、静かに沈黙していた。
 人々は皆、珍しい髪の色をした美少女と倒れている軍服の男を遠巻きにし、道をあけていた。
   数分前   
「うっらあぁぁ!!」
アエリスにいきなり、軍用のナイフを持った男が襲いかかってきた。
「!」
アエリスは素早く後ろへ下がり、男と距離をとった。
「…やめなさい。さもないと痛い目見ますよ?」
その言葉を聞いて、男の動きが少し止まった。
 その言葉を発したのが、とても美しい髪の色をした、美少女だったからだろうか。
淡い空の色をした髪に、大きな澄んだ瞳   何かととても大きな魔力を感じる瞳に、そつなくおさまった高い鼻や紅色の唇。
しかし、男は自分の主に命じられた事を思い出し、再び少女に向かって突進していった。
アエリスは軽くため息をつき左手を上げた。
「Жящ£φ」
「!?」
突進してきた男の足がぴたりと止まり、ナイフを持った右手がぶるぶると震えだした。
「  あなたは何者ですか  とは、聞かないでおきましょう。聞かなくても分かりますから。」
「!?」
「マリウス皇帝の部下ですか。ふむふむ。そんな理由で私を殺そうとしたんですか…。
あぁ…妹を人質に…。なるほど。へぇ〜」
 男は一言も言葉を発していない。なのに、
この少女は男の過去・現在について一寸の狂いもなく言い当てる。まるで、男の記憶をそのまま読み上げているかのように。
「あぁ、別にあのへちゃむくれさんはあなたの妹を殺したりしませんよ?あれでも一応、人民思いですから…。」
その言葉を最後に、男は自分のナイフを手から離し、気絶したのだった。


◇エアロ 〜メアルトにて〜

 エルビアスから南に数十qほど離れた小さな町
メアルト
広場に町の人々が集まっている。
 この町はあまり発展していないため水が手に入りにくい。
そこに住む少女エアロ。彼女はこの町で唯一の魔力の持ち主で、水の部族のためこの町の人々は 彼女の元へと集まり水を手に入れている。
エアロが家に帰ると兄のゼアルが昼食を作っていた。
「ただいま〜」
「おかえり、昼飯もうすぐできるから待ってな」
二人は早くに両親を亡くして二人暮らしをしている。
いつもと同じ様に食事を始めると、
「ねぇ…お兄ちゃん」
「ん?なんだ?」
今日のエアロはいつもと様子が違った。
「あたし、旅に出たい」
ゼイルは口の中にあったスープを吹き、咳き込んでしまった。
「何言ってんだよ、お前!町の外は危険ばっかだぞ!それにお前がいなくなったら町の人たちが困るだろ。」
「あたしだってもう十六歳になったし、子供じゃないんだよ?町の外じゃなきゃ分からないことってたくさんあるでしょ。あたしはそのたくさんのことを知りたいの」
そう言うエアロの言葉に兄は少し戸惑った表情をすると、
「…わかった。だけどな、少しでも危険だと思ったらこれを使うこと。」
そう言うとゼアルは、エアロの手首に光り輝く小さな石がついたブレスレットをつけた。
「これは…?」
「いざってときは役に立つだろうよ。」
シャラっという音をたててエアロの手首のそれは輝いた。
「ありがとう、お兄ちゃん…。」
エアロは兄の優しさに感謝しながら、改めて旅へ出る決意を決めたのだった。
 そして数日後、エアロは兄と町の人々に見送られながら旅に出て行ったのだった。


◇ミカエル 〜ルフィニアにて〜

「それで、今回のお仕事は何ですか?」
 ダイアナ国の中央、ルフィニアのそのまた中央に位置する皇帝の城。その城内。
城の関係者でも限られた者しか入れない、皇帝の部屋。
そこに彼女はいた。
「今回は前回より簡単で安全だから安心してくれ」
「あなたの簡単≠ニ安全≠ヘ信用できません」
ふてくされたような表情を見せ、彼女は笑った。
 彼女、便利屋・ドールはこの国…。いや、この世界全土にわたって便利屋として活躍している。
もちろんドールというのは、仕事上での名前であり本名は違う。
彼女の本当の名は、ミカエル。ルフィニアに近い小さな貧しい町の生まれだ。
「君には期待…というか、信頼をおいているんだからたのんだよ。ドールくん」
「分かってます。マリウス皇帝直属のお仕事屋さんですから。」
「君にはいつも感心させられるよ。まだ十八歳だというのに。」
「お褒めに預かり光栄です」
ハハハっと皇帝は笑いながら一枚の紙を渡した。
「これを手に入れてきてほしい。たのむよ。」
「おおせのままに。」
そして、彼女は城を後にした。
 彼女が城を出て、城下町の商店街をぬけ、裏の路地へ入ったところで、頭上から声がかかった。
「今日もお仕事ですか?」
「イリーザ…」
「…仕事中ぅー」
「あーはいはい。ごめんなさいね。クラウン」
 彼は、この国…おもにルフィニアを中心として活動している情報屋だ。
ちなみに、ミカエルをこっちの世界へと連れて来たのはこのイリーザだ。
 ふと、イリーザのジャケットに目をやると一ヶ所破れていた。
「どうしたの、それ?」
「え?…あぁ、コレ?まただよ…。」
「あぁなるほど、またやられそうになったの」
そう、彼は男なのだが容姿端麗なため、よく女とまちがわれるのだ。
それで今回も、おそらく襲われそうになったのを上手く逃げてきたのだろう。
そのときにどこかに引っ掛けたのだろう。
「本当、困るよね。オレ、男なの分かってのかな…。」
「ハハハッ。」
「笑ってる場合じゃないから。」
そんな、他愛もない話をしてると。
「「   っ」」
二人の目の前に、男たちが現れた。

ワガアルジノタメニ…
男たちは自分達の主の命令を果たすべく、二人の人間に襲いかかった。
片方は細身の紅い髪の少女。
片方は黒ずくめの美少女。(注・男です)
男達は迷うことなく二人に襲いかかる…
が、少女達(片方男)まであと一歩の距離という所で、細身の少女の方の姿が消えた。
「!?」
男達が足を止めると、イリーザは口笛を鳴らした。
「ああ、『便利屋』は伊達じゃないんだ。」
その言葉は男達の後ろに向けられていた。
「……ッッッ!」
    男達の後ろには緑の瞳をした細身の少女。
「まあね。」
それだけ言うと、ミカエルはいつの間にか拾ってきた鉄棒を、眼前の男の前にたたきつけた。

 路地の裏には、倒れている数人の男達。
「あの鉄棒首につきつけて脅せばよかったのに」
イリーザは倒れている男達を調べているミカエルを見つめ、背を壁に寄りかからせた。
「だってクラウンを見てもまったくスキ見せなかったんだよ?この人達。脅して吐かせようとしたってムダムダ。すっごい忠誠心だもん。」
そう言ったミカエルは男の服から何か見つけたらしく、整った顔を輝かせた。
「隣の国の密偵だね!わーいお手柄!」
「なるほど〜」
「「!!」」
ミカエルとイリーザの後ろから気の抜けた女性の声が聞こえた。
「この男達は、あなた達を狙っていたんですね。あぁ、この男達はなんてバカなんでしょう。マリウス皇帝の信頼している方って知らなかったんですかね。え〜と、情報屋のクラウンさんとあと…ミカエルさんですね。はじめまして。」
「「......ッ」」
「あと、この人達は隣の国の皇帝から、マリウス様の信頼している人物を殺せという命令で動いていたようですけどよかったです」
 突然現れた女性に驚いているばかりか、彼女はペラペラと一人で話し始めたではないか。二人は突然起きた事態に脳がついていかずただボーっと彼女を見ているだけだったが、自分達の現在の状況を思い出したかのように目の前の女性に警戒と疑問を抱き始めた。
「あなたは、何者なの?」
「敵?味方?どっちだよ。」
そんな二人の様子を知ってか知らずか彼女は、ただ自分にされた質問の答えを淡々と答えた。
「あぁそうでしたね。私の名前はアエリスといい
ます。あなたの味方です…と言っても信じないでしょうね。でも、クラウンさんなら分かっているとおもいます。まぁ、そのうちイヤでも信じることになりますから。」
その言葉を聞くとクラウンは、何かを思い出したように勢いよくその名を発した。
「アエリス…アエリス!!なんで貴方のような方がこの国にいるんですか!?」
「クラウンこの人って誰?もしかして偉い人!?」
ミカエルが腑抜けた質問をイリーザに投げかけると、イリーザは見かねたようにアエリスの事を早口で少々説教交じりに説明してくれた。
「偉い人って…あのな、この人  いや、この方は世界でも最高クラスの賢者に入っているクロスゼリア・アン・アエリス様なんだよ」
するとミカエルは感心したように
「え〜、あのアエリスサマなの〜!!」
と、一人興奮している。
そんなミカエルにイリーザは
「静かにして!」
と彼女を叱咤するように言った。そしてアエリスに一つの疑問を投げかけた。
「しかし、なぜ此処にアエリス様がいるんです?わざわざ変装までして…」
するとアエリスは、当たり前のように二人に自分がこの国へ来た経緯を話し始めた。
「うん、変装はついさっきやったんだけど今回この国に来たのはソドムを呼びに来ただけなの」
「「ソドム?」」
二人は顔を見合わせ首をかしげながら言った。
「ソドムっていうのはドラゴンなの」
「「え?」」
それでも二人は彼女が何を言っているのか分からないと言っているような表情をした。
「だからドラゴンなの!!」
「えーっ!」
ようやく二人は分かったと言うように驚きの声を上げた。
「あとね、貴方達の仲間に入りたいんだけどいい?」
彼女は唐突過ぎるその言葉を、ごく普通に吐き出してみせた。そんな彼女にミカエルは慌てているような口調で言葉を継げた。
「そ、それはマリウス皇帝の許しがないと…」
「許しを貰えばいいのね?分かったわ!」
 そう言った数日後、アエリスはミカエル達と仲間になった。
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