Wise Person Story

□2:出会いと集い
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◇フィル 〜ルフィニアにて〜

「え〜と…」
フィルは軽く頭をかいた。訳が分からない。
ふと視線を感じ、頭を上げる。
二つ年上にも関わらず、フィルはカリサの身長を有に超えていた。目線を合わせるとどうしてもフィルは下を見ることになるにである。
フィルの目が捕らえたものは、大通りに買い物にきた街の人々の好奇の目だった。フィルは自分達が大通りのど真ん中で話を進めていることに気がついた。
街の人々の目には長身で細身の青年と、白髪の整った顔の少女が映り、二人はただならぬ関係だと感じたに違いなかった。
フィルはため息をつき、先ほどからこちらの反応を待っている少女に短く告げた。
「場所変えようか。」

二人が入ったのはこじゃれた軽食店だった。
席に着いたとたん、いきなりカリサが口を開いた。
「敬語やめていいですか?」
「そっから!?」
思わずツッコミを入れる。
どうやらこちらが返事を返さないと話が進まないらしい。
「…別にいーよ?」
フィルは人の良さそうな顔でにっこりと笑った。
「…なんだっけ、えーと、賢者?の候補に私選ばれたんだっけ?この前何人か使いの人来たよ?」
カリサはふと思った。
自分の前に使いなどあったであろうか、と。
それよりも、気になることがあったのでそちらを優先することにした。
「あなた女の方ですか?大変失礼ながら私にはぺったんこの美青年にしか見えないのですが。」
「うわ、けっこうストレートにきたなぁ。」
フィルは苦笑顔だ。その後テーブルに頭を抱えて突っ伏す。
「…ぺったんこ…」
どうやら傷つけてしまったようだ。
カリサは少し後悔した。


◇ゼアル 〜メアルトにて〜

「そういえばさ」
ゼアルはふと思うところがあって、フィシュレンシーことフィレに問いかける。
「さっきあんたの恋人…フィルだっけ?の方が剣の腕は上って言ってたけど何かあんのか?」
延々と続くのろけ話の中でちらりと言っていた。
フィレはこちらを少しじっと見た後、目をそらし、ぼそりと言った。
「あぁ。あいつスポーツ系だからな。剣の腕だけで十分だから、火の魔術あんま進んで覚えなかったんだよ。」
というか、この化け物の剣さばきより上いく奴いるのが驚き。ついでにもう一つ質問。
「フィルさんて火の部族の土地にいないのか?旅してるって言ってたけど。」
延々と続くのろけ話の中で…以下略。
フィレは先ほどと表情を変えずに言った。

「…あいつさ、子供の頃、人殺しかけて部族追放されたんだよ。」



◇マリウス 〜自室にて〜

    三人。

正確に言うと四人。

   手に入った人の数。

ルリサとカリサとフィルと…あと一人誰だっけ?
確かルリサに取りに行かせた奴。
…まぁ、いいや。

彼は輝く金髪を後ろにかき上げた。にやりと口をゆがめた。笑みが止まらない。

   要らない駒はないかな。邪魔になる奴
今のところ無いか。
あの二人は外せないな。あ、あとあの二人とあの人と
全員だな。
ドールは必ず外せない。全部族の力を使える奴なんてめったにいない。
    面白い。

ろうそくの火が揺れた。

もう少しでゲーム板が完成する  あと少しで。
私は自分の欲望のためだけにコレを進めてきた。
自分の退屈感を誤魔化すためだけに、駒を揃え、ピースを揃えて。

コンコンとドアをノックする音がした。そのとたん、彼を取り巻く空気が変わる。
「坊ちゃん」
部屋に入ってきたのはエドモントだった。
「もう、お休みの時間ですよ。」
ムスっとした顔で彼、マリウス皇帝は答えた。
「わかっている。今寝ようとしたところだ。」
「そんな事を言って。また、ゲームの事を考えていたのでしょう?」
そう言ってエドモントは含み笑いをする。語尾にマリウスをからかう声音が入っていた。
「まぁそんな所だ。ホットミルクはいらない。もう寝る。」
「わかりました。では、よい夢を。」
エドモントが息を吹いた。
ろうそくが、消えた。


◇ミカエル 〜ロブケイクにて〜

ミカエルは道中を急いでいた。
街のチンピラ共を蹴散らしてすり傷程度にした後、イリーザ達の後を追っていた。
「クラウンめ…。使いだけよこして、場所は教えてくれないのかよ…。やっぱ別料金取ってやろう」
   数分前
「__ッ!」
イリーザにこの場を任された後、ミカエルは周りを囲まれていた。
先ほどイリーザに「オリーちゃん」と呼ばれていた青年(イリーザに引けを取らないくらいの美青年)とケンカをしようと集まってきたのであろう街のチンピラ達がミカエルにガンをつけながら、それぞれ不満や文句を言い合っていた。
「お姉さんさぁー、何なワケ?俺ら、オリガちゃんに用があって来たんだけどさぁー。何?お姉さん、俺らの相手してくれちゃうワケ?」
   うぜぇ、何コレ。
私悪くないと思うんだけど?
てか、あの子オリガっていうんだ…。
ふーん…
チンピラの一人がミカエルにいちゃもんをつけてきたが、ミカエルはそんなことは気にもせず、ただあの青年の名前がオリガという事実だけを受け止めていた。
「いや、お姉さんて言われるのは嬉しいケドさ…
相手ねぇー…なってもいいけど、怒らせないでね?魔力とか使っちゃうとちょっとヤバイからさぁ。まぁ、そんなコトありえないだろうけど」
チンピラ達を挑発するかのようにミカエルは言い放った。
「はっ!ずいぶん言ってくれんじゃねーの?お姉さんさ、強いわけ?アノ、オリガより?ありえねぇでしょ」
「ありえないなんてことはないんだよ、チンピラ君達」
チンピラに対して冷静に会話をするミカエル。
確かに、チンピラにとっては急に街に現れた女に負けるなど屈辱的すぎることだった。
さらにチンピラ達はオリガにすでに敗北している。ここでミカエルに負けでもすれば、チンピラ達の格は地に落ちるというものだ。
「んじゃ、誰でもいいから来なよ。めんどくさいから、ちゃっちゃと済ませたいんだよね」
「ッ?!ハッ、上等じゃねーかよ。やってやろうじゃねぇか!!」
そして、激しくもなく、ものの数分で終わる戦いが始まった。
「うらぁぁぁああああっっ!!」
ミカエルに一人の男が襲いかかったが、男の動きなどすぐに見破られいとも簡単に避けられてしまう。
その後も何人かの男が一人でミカエルに襲いかかったが、ミカエルに触れるかとなく、次々に倒れていった。
「っ!くそっ!おらぁぁっ!」
「うがぁあああっ」
「ああああああああ!!」
その後、男達は一人では無理だと思ったのか何人かでミカエルに襲いかかったが先ほど同様あっさりとやられてしまう。
そして、ミカエルの前にあれだけいたチンピラはあっさりとミカエルにやられてしまった。
「最後は、貴方だけど…どうする?私とケンカする?それとも尻尾巻いて逃げる?」
チンピラをあざ笑うようにミカエルは言った。
「てめっ!ふざけんじゃねーぞ!誰が逃げっかよ!」
「あっそう。んじゃ、最後だし…ちゃっちゃと済まそうよ」
チンピラの悪あがきもむなしくミカエルは「さっさと終わらせたい」といった様子で、チンピラがどうなろうと知ったことではないようだ。
「ッ…!お、おぼえてろよ、このクソビ●チが!!」
チンピラは、いかにも小者が言うようなセリフを吐いて逃げていた…が、ミカエルはその言葉に少々怒りを覚えたようで、額に青筋が一本たっていた。
「…おい、誰がクソビ●チだって?」
ミカエルは口調こそ静かだったものの、その声は低くドスのきいた声で、周りにいた人でさえも「殺されるのではないか」と思うほどだった。
そして、チンピラの男に一筋の光が落ちた。
青白く、それでいてすさまじい威力を放つ稲妻が。

その後ミカエルが、倒れているチンピラを一瞥しているとき、イリーザの使いであろう漆黒の翼を大きく広げた鳥が現れた。
そしてミカエルはその鳥を追ってここまで来たというわけだ。
ミカエルがふと前…今来た道の先を見た時だ。
そこには、大きさこそ小さいがとても綺麗な川が流れていた。
そしてそこに、三つ人影が浮かび上がってきた。
   …。イリーザだよね?いや、あの宝石のように輝いている(笑)黒髪はイリーザしかいない。あとあの金髪…オリガさんだよね?
ミカエルは、心の中でほぼ絶対というほどの確信を持って人影に声をかけた。
「クラウン…ンンンンン?!」
そしてまたミカエルは、普通ではありえない光景に遭遇するのだった。


◇マリウス 〜自室にて〜

 マリウスは浅い眠りの中、ゲームのことを考えていた。
暑くて、長い金髪をはらいのける。

   これで、国の運命が変わる。この腐った国の運命が…。あいつらに任せておけば、きっと  …。

実はダイアナ国は、元老達が政治を取り仕切っていた。それに終止符を打ったのが、このマリウス・E・ルイス・フィーシアル7世ことマリウス皇帝だった。
体の芯まで腐ったオヤジ共に政治を任せるなんて、まっぴらゴメンだった。
  君には、この決断ができるのか?  
  何もしてないくせに?  

嫌だ  …嫌だ嫌だ 寒気さえおぼえる。
  え?寒気?
目を覚ますと、あたりは真っ暗で自分は嫌な汗をたくさん掻いていた。
「はぁッ…はぁッ…ッ…ふーっ…。」
横を見ると  「大丈夫ですか?」
  つくづく悪趣味な奴だ。
エドモントが立っていた。
「ずいぶんとうなされておりましたよ。…ホットミルクをお入れしましょうか?」
「フン。…たのむ。」
  パタ…ン。 扉が閉まり、一人になる。
 どうする?ゲームは始まったばかりだ。
マリウスは、机の上のチェス盤を見つめた。
ポーンには「Zearu」と刻印がある。そして、もう一つ「Origa」。
ナイトには「Rulisa」、「Dorl」、「Irieeza」。
クイーンには「Ealo」。キングに…「Aerise」。

反対側に、
ポーンは「Fire」、ナイトに「Karisa」、キングに「Firu」。
…。少ない。
   ふむ。黒側にクイーンが足りない。
…ガチャリ。
「ホットミルクをお持ちしました。…おや、坊ちゃん、クイーンですか?」
  出来の良い奴だ。エドモント。
「用意しろ。あ、砂糖も持って来い。」
実は甘党のマリウスだった。

「行け …」
エドモントは、マリウスの言葉を聞いてため息をついた。
微笑みと一緒に。

そして、エドモントは約束通り、「クイーン」を連れて来た。
…男だが。
「僕は、エリスウィンド北東部から来ました。桐也です。」
「そうか。遠い所をありがとう。」
出た。マリウスエンペラーの、営業用はりぼてスマイル「エンペラースマイル☆」。
にっこりとうすっぺらい笑顔をはりつけたまま、マリウスは東洋人らしき桐也に「君の武器は?」と聞いた。
キリヤは「これです。」と言って、なにやら集中しはじめた。
「?」…バサリ。
ふむ  …
「白銀鳥と魔族のハーフか?」「はい。」
そう、桐也の背中からは、白と銀の境目のような色をした翼があった。

「僕の本名は白銀桐也。白銀鳥の父と魔族の母とのハーフです。」
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