Cuore Luna

□第二章 悪夢の始まり
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「いざとなったらすぐ助けに行けるように、この辺に待機しよう」

サンゴの提案で、リグナトルからいくらか離れた海洋上で船は停泊した。
様々な状況を想定して、タンジェリーナたちは船上で打ち合わせをする。

「怪我人がいるようだったら、私が抱えて飛んできます」
「そうだな、そうしてくれ。その場合アタイたちは……――」


こうして準備を整え待機していたのだが――数時間後、全くの想定外な事が起きた。
いや、正確には、想定のしようがない事が起きた。


「ん? 地震か?」

船員の一人が、不意にそう呟いた。確かに、波が不自然に揺れている。
しかし、タンジェリーナとサンゴはすぐに異常に気が付いた。

(違う、これは……!)

二人は思い当たると同時に、リグナトルが臨める方向の船縁に駆けた。
船員たちも、何事かとそこに集まり始める。
急激に強くなっていくその揺れは、案の定リグナトルからやってきていた。

「!!」

そして、船の上にいた人々は目を見開いた。
波が高く盛り上がり、大きな水飛沫と波を起こして――巨大な『何か』が、陸を裂いて海中から飛び出したのだ。

その『何か』の出現による波で、船もまた大きく揺れ動いた。
船員たちはその激しい揺れに耐えきれず、床を転がり、背を壁に打ちつける。

「うわぁあああああ!?」
「何やってんだい、あんたたち!」

柱に掴まって立ち続けながら叫ぶサンゴ。

タンジェリーナは、そんな騒ぎを船の上空で聞いていた。ソーマの翼で空へ逃れていたのだ。
信じられないものを見る感覚で、タンジェリーナは事の一部始終をそこで見ていた。

海中から飛び出した『何か』の正体は、淡いエメラルド色の体の、一匹の巨大なクジラ。
そして、タンジェリーナが最も目を疑ったことは――そのクジラが、光の翼のようなものを持っていたことだった。

まるで、幼い頃には誰もが読んだであろうおとぎ話・『眠り姫』に出てくる、羽クジラのように。


クジラは翼を大きく広げると、そのままどこかへ飛び去ってしまった――。
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