Cuore Luna

□第三章 使命
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「そんな……夢を喰らう魔物だって?」
「俺たち、死ぬしかないじゃないか!」
「エメラルドの髪の女だとよ」
「本当に助けてくれんのか?」

あの映像が終わり、港は動揺と混乱でざわついていた。
こんな物々しいざわつきを港で聞くことになるとは、タンジェリーナは思ってもみなかった。

いや、おそらく、この港に限ったことではない。
世界中――原界中の街で、この騒ぎになっているだろう。

(原界の全スピリアを……吸収?)

タンジェリーナは、予感がいよいよ外れでなくなってしまい、激しい動揺と不安に駆られていた。
同時に、タンジェリーナは重大なことに気付く。

(エメラルドの髪の、女!?)

南ペンデロークで再会したシングたち。
あの時ヒスイが連れていたのは、エメラルドの髪の少女だったはずだ。
この原界にそのような髪の人間はいないのだから、間違うはずもない。

つまり――今や賞金首扱いとなった少女を連れていたシングたちや、彼らと合流したであろうイネスの身が、危ないのではないか?

「…………!!」

タンジェリーナはどこかへ駆けだそうとして――しかしやはり、踏みとどまって俯いた。
先ほどの葛藤が、再び頭をもたげたのだ。

(私には、優先すべき使命がある。だけど……、……)

タンジェリーナはゆっくりと顔を上げ、目の前の海を見つめた。
まもなく、日が沈もうとしている。
波は、その夕暮れの光を浴びて、橙色に煌めいていた。


(……私は、何か大事なことを忘れている……?)

不意に、タンジェリーナは気が付いた。
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