Cuore Luna
□第三章 使命
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タンジェリーナの掲げる『使命』は――母の故郷を見つけ出し、母をそこへ帰すこと。
父が亡くなり、残る望みは自分だけになってしまったタンジェリーナは、父の代わりにそれを為し遂げようとしていた。
しかし――自分の力で世界を回ることなど、果たしてできるだろうか?
その不安と迷いが、こうしてタンジェリーナを傷付けることになった。
偶然ガラドが通りかからなければ、あの時タンジェリーナは間違いなく死んでいたのだ。
だが、そのおかげもあって、タンジェリーナは決心できた。
日に日に弱っていく母を残して故郷を出るのは確かに不安だが、保証のない未来は、動かなくては何も変わらない。
ならば、何者にも打ち勝てる力――ガラドのように、誰かを守れる力――を手にして世界を回るのだ、と。
それからほどなくしてタンジェリーナは、今の荷の護衛という仕事を見つけた。
着実に力がつくだけでなく、各地を飛び回って色んな情報を得られる、タンジェリーナにとって夢のような仕事だった。
そしてそれは、時には人を守ることができて――タンジェリーナは喜びを感じていた。
しかしながら、四年が経った今でも、母の故郷の手掛かりは一向に得られていない。
ダメ押しに、母の容体は今やいつ亡くなってもおかしくないほどに悪化していた。
それが少なからずタンジェリーナの心に焦りを生み、『使命』だけを優先すべきかと迷わせていた。
使命を成すためには、弱い立場にあるものを守ることも大事な通過点だと、認識していたはずなのに。
「…………」
タンジェリーナは、自身の心の中の葛藤が少しずつ落ち着いていくのが分かった。
タンジェリーナにとってまずすべき事が、ようやく定まったためだ。
(私が、最初にしなくてはいけないこと。それは……――)