Cuore Luna

□第四章 タンジェリーナの交流
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普段は開いたままにされているはずの帝都の城門は、堅く閉ざされていた。

「門が閉まってる!」
「きっと、ゼロムに対抗するため戒厳令が敷かれたのね」

マクス帝国の象徴である獅子が描かれた城門の装飾を見上げて、イネスが呟く。

「ゼロムの混乱に紛れて入り込めるかと思ってたんだけど、これじゃムリか……」
「私が飛んで入り込むのはどうですか?」

タンジェリーナは提案してみるが、「万が一軍に見つかった時に色々と危ないわ」と、イネスに却下される。
シングは城門に駆け寄ると、大声で言った。

「すみませーん! 開けてくださーいッ! オレたち、帝都に用があるんだ!」

軍に追われている実感がないためにシング自身が忘れているのかもしれないが、シングたちは訳あって軍に指名手配されている。
それを知っているため、タンジェリーナは思わずギョッとした。

「バ、バカ野郎! 俺たちだって軍のお尋ね者なんだぞ……」

ヒスイが止めかけたその時――草陰から結晶騎士の制服をまとった女性が現れ、シングの腕を掴んでタンジェリーナたちの元に戻ってきた。

「こらー! お尋ね者どもが何やってんのさ、バカッ!! 捕まりたいのか!」

いきなり現れ怒声を浴びせてきたその女性を知っていたのか、シングたちは目を見開いた。

「ペリドット!? 無事だったんだ!」

女性――ペリドットは、ああ、と頷く。

「一度軍に投降したけど、バイロクスが逃がしてくれたんだ。隊長と合流しろってさ……」
「ペリドット。カルセドニーとバイロクスがどうなったのか、分かる?」

イネスが冷静に問いかける。

「隊長も軍に投降したって話だよ。今はバイロクスや他の騎士と一緒に教会に幽閉されているはずさ」

ペリドットの先ほどまでの強気な表情が、一転して弱々しくなった。

「でも、きっと隊長は軍に……ど、どうしよう、このままじゃ隊長、処刑されちゃうよぉ!」
「何とか潜入する方法は思い当たりませんか?」

リチアが尋ねると、ペリドットは目を見開いた。

「エメラルドの髪!? あんたが……リチア……さまなの? どうして、シングたちと一緒に……」

シングたちは、大まかないきさつをペリドットに話した。



「そうか、だからクリードってのはリチアさまを狙ってんのか……」

事情を把握したペリドットは、舌打ち交じりに言う。

「そんな大変なときなのに、世界のために戦おうって隊長を処刑なんて、軍はホントバカだよ!」

それを聞いてタンジェリーナは思わず、

(何だか、サンゴさんに雰囲気が似ています……)

と思ったが、取りあえず黙っていた。

「ねえ、あたし、何でもするからさ……隊長を……助けてよ」

ペリドットの懇願に、シングが力強く頷いた。

「オレたちは、そのために来たんだ」

その言葉を聞いて、ペリドットの表情がパアッと明るくなる。

「この恩は一生かかっても返すよ! 必ず返すよ!」

ベリルが可哀そうなものを見るような目で呟いた。

「あ、イネスの前で……バカだなぁ」

当のイネスは既に、満面の笑みを浮かべている。

「いいこと聞いちゃった。『日々寧日』の新従業員はっけ〜ん♪」
「そんな話、後にしろよ! もう!」

さすがにヒスイがそう突っ込みを入れた。
タンジェリーナは苦笑いする。

「イネスさん、相変わらずですね……」

ヘンゼラで送った時にはイネスはだいぶ参っていたようだったが、もう心配はないらしい。
シングたちのおかげなんだろう、とタンジェリーナは安堵した。

「……で、問題はどうやって帝都に潜り込むか……だな」

ガラドが本題を投げかける。

「以前とは逆に、地下水道から侵入してみる?」と、イネス。
帝都の下には地下水道が張り巡らされていて、帝都の外に繋がっている場所もあるのだ。
しかし、ペリドットはかぶりを振る。

「地下水道も封鎖されていて、もう外からは入れないんだ」

それからペリドットは、考えるような素振りを見せながら言った。

「ひとつだけあるのは、シャルロウまで行って船で川を下って入る方法かな」
「あるんじゃないか、方法が! さっそく、シャルロウに向かおう!」

シングの言葉に、ペリドットを含む一行は頷いた。
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