Cuore Luna

□第五章 戦友
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ペリドットが言った『前にシングが幽閉された部屋』に辿り着くと、その扉の前には木箱が積み上げられていた。
その箱が時折、扉の内側から衝撃を受けて微かにだが揺れている。

「……ここですね」

タンジェリーナが呟いた時、部屋の中から声が聞こえた。

「もう止めろ、バイロクス! お前の肩が砕けてしまうぞ!!」
「あの方の命がかかっているのだ! 私の肩など、どうなっても構わん……ッ!!」

箱の奥の部屋の中には、先ほどペリドットの話にも出たバイロクスを含む数人がいるようだった。

「今、出してやるからな!」

シングは言うと、左手の盾からソーマを抜く。そして、ソーマを木箱に叩きつけた。
木箱は、その渾身の一撃で粉々に砕けた。

ペリドットは扉を蹴破るような勢いで部屋に飛び込んだ。

「バイロクス! 隊長! 無事か!?」
「ペリドットに、メテオライト!?」

肩を押さえて立っていた大男――バイロクスが、驚いたように声を上げた。

「あれ……カルセドニーは?」

シングの問いに、バイロクスが切羽詰まった表情で告げた。

「カルさまは軍に連行された! まもなく広場で処刑が行われる!」
「!!」

一行は驚き、息を呑んだ。

「教会と軍の間に起きた混乱……その責任を全てカルさまに押し付ける気なんだ! あの方は、我らの身と引き替えに死ぬおつもりだ!」
「そんな……!」

その時、大砲を発射したような音が遠くで――しかし、帝都内だと分かるくらいの大きさで――響き渡った。
その音に、バイロクスがハッとして顔を上げる。

「この音は、私のソーマの発射音! まさか、私のソーマでカルさまの処刑を行う気か……そんなマネさせてたまるかッ!」
「ペリドット、バイロクス! まだ間に合う! カルセドニーを救い出せ!」

そう言ったのは、バイロクスと一緒に部屋の中にいた結晶騎士の一人だ。

「言われなくても!」
「この命にかけて!」

息ピッタリに言ったペリドットとバイロクスは、シングと同時に部屋を飛び出した。その後にコハク、ベリルが続く。

「皆さんは地下水道を使って逃げてください!」
「内側からなら、封鎖も破れるはずです」
「羽の兄さんのことは俺達に任せときな!」

タンジェリーナ、イネス、ガラドもそう言い残してすぐに部屋を出た。


タンジェリーナは気付いたことがあって、エメラルドの長い髪を揺らして走るリチアに声をかける。

「今あなたが見つかると、騒ぎが大きくなる。だから、処刑を止めるのはシングさんたちに任せましょう。リチアさんは私から離れないでください!」
「は、はい!」

こうして一行は、広場を目指した。
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