Cuore Luna
□第五章 戦友
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「聞けぃ、帝国臣民よ!」
帝国軍上将――グロシュラーの野太い声が、広場中に響く。
「軍の調査によって、夢を喰う魔物が氾濫した原因は……バレイア教会が、呪われし武具ソーマで人のスピリアを侵したためであると判明した! また、世界を脅迫したクリードと名乗る男も、バレイア教関係者であるとの証言も得た!」
グロシュラーは拳を握りしめ、言葉を続ける。
「平和を脅かし帝都を転覆させんとする教会の卑劣な犯罪行為に対し、我が軍は断固たる態度でのぞむ!」
そう言ってグロシュラーは、背後を振り返る。
そこには、簡素な処刑台の上の柱に縛り付けられたカルセドニーの姿があった。抵抗するでもなく、落ち着いた様子でそこにいたのだ。
彼の隣には、いくつものソーマが入った箱が置かれている。
「その証として、皇帝陛下暗殺未遂犯カルセドニー・アーカムの公開処刑と、教会の所持する全ソーマの廃棄を執行する!」
グロシュラーは足元に置かれていた携帯大砲型のソーマを担いだ。
それを見て、カルセドニーが呟く。
「そのソーマは、バイロクスの……」
「貴様の死に対する礼儀だと思ってな。結晶騎士たる者、せめてその命はソーマによって絶たれるべきだろう」
グロシュラーは、大砲のソーマをカルセドニーの隣の箱に向けた。
ソーマの筒先に光が集まり始める。
「見よ、臣民よ! 結晶騎士の証たるソーマの行く末を!」
言うなり、グロシュラーはソーマを放った。
箱は耳をつんざくほどの轟音を立てた後、燃え上がる。
すぐにその火は周囲にいる帝国軍兵士たちによって消された。
「これで教会は無力だ!」
次いでグロシュラーは、カルセドニーにソーマを向けた。
「残る教会のソーマは、これと貴様が身に着けている物。二つだけになったな。そして、そのソーマも貴様と共にこれから消える。教会が軍に歯向かうことなど、最早かなわぬだろう。……さて、カルセドニー・アーカムよ。何か言い残すことはあるか?」
グロシュラーの問いに、カルセドニーはすぐにかぶりを振った。
「……何もない。私がこの場で死んでも、想いは必ず残る。私の想いは必ず伝わる。想いを繋いでくれる者がいれば、死など恐れるに足りん」
「想いを繋いでくれる者?」
怪訝な顔をするグロシュラーを真っ直ぐ見据えて、カルセドニーは言う。
「ああ。この世界を託すに足る、私がこの世で唯一認める『男』のことだ。その男は、自らの呪われた生まれを乗り越え、世界のために戦おうとしている」
「ふん。呪われた生まれか……。貴様も、あの男の息子などではなくワシの部下であれば……惜しいものだ」
グロシュラーは静かに言うと、再びソーマを構えた。
「……覚悟ッ!」
ソーマの筒先に、先ほどと同様に光が集まり始める。
カルセドニーは、目を閉じた。
「……さらばです。パライバさま」
――そして、何かが爆ぜるような音が響いた。