幸せの樹
□1.始まりと違和感
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今日私はあの腐った考えしかもたない両親の元から逃げ出す。
引っ越す先は適当に決めた。
誰にも探し当てられないような地図にも名前がない“ハッピーツリータウン”と言う田舎町に行くのだ。
地図に名前がない町を何故私が知っているのか…それは、噂だった。
“ハッピーツリータウンは資格のある人しか移住できない町。幸せの町。お誘いの手紙が来た貴方は世界一の幸せ者、ハッピーツリーに選ばれた幸せ者。”
馬鹿らしい噂だったけど、ハッピーツリータウンから手紙が来た私はすぐに返事を書き移住を決めた。
好機だと思ったのだ。
引っ越す先を決める必要がないし、何より移住すれば家賃はいらない。
そんな甘い誘惑で、私はハッピーツリータウンに行くことを決めたのだ。
後ろを振り返る。
住み慣れた、けれど良い思い出のない家が視界に映る。
「サヨナラ、最低な生活…。」
静まり返った薄暗い早朝に私の呟きが響いた気がした。
最低限の手荷物と祖母に貰った御守りと共に家を後にした。
それから私はバスに乗り、電車に乗り、長い時間をかけてハッピーツリータウンがある場所に向かった。
手紙に入っていた手書きの地図ではハッピーツリータウンはもうすぐらしい。
電車を降りて歩き出す。
ちょっとした山道に少し足が竦む。
私はあんまり体力に自信がないからだ。
登って降って、登って降って。
数十分程歩いた辺りで、がくんと身体が倒れた。
視界が霞む。
耐え切れない眠気が押し寄せてくる。
さっきまで体調は万全だったはずなのに!
「う、そ…でしょ、…?」
ハッピーツリータウンが近いのに!!
私はそのまま深い眠りに落ちた。