短編

□ポッキーゲーム
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「澪ー」

『んー?何ー?クロハ』

「一つ頼みごとがあるんだけど」


珍しい。

クロハが人に頼み事をしてくるなんて。

可愛いなぁなんて思って軽い気持ちで『いいよ。何?』と了承すると、


「キスしねぇ?」

『は?』


可笑しいな、聞き間違いかな。

いや、きっとそうだ。

そうだと願いたい。


『・・・なんて?』

「キスしようぜ」


・・・はい聞き間違えじゃなかったー!


一人漫才を広げているとクロハが近寄ってきた。


『ちょっ、ちょっと待ってクロハ!』

「嫌だね」

『サドかお前は!』


慌てて後退するもすぐに壁に背中がぶつかる。

背筋をひやりと冷たいものが流れたのは壁のせいか。


ずいっと近づけられた顔はあと数センチで触れてしまう。

と、おもむろにクロハが取り出した箱。


『・・・ポッキー?』


いたって普通のポッキー。

べりべりと包装をはがすとポッキーを一本取り出して私の口に突っ込んだ。


『むぐっ!?』


のどに刺さりそうになったポッキーを咥えると、反対のほうからはクロハが咥えていた。

私の視線に気づいたクロハは顔を上げ、にやっと笑った。


「ポッキーゲームな。逃げたら負け」


あ、負けた方が勝った方にキスな。


そう聞いた瞬間逃げられないと最後まで頑張ろうと思った私は多分馬鹿なのでしょう。




ポッキーゲーム


 

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