After Story

□辛い夢と幸せな現実
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「名前!床が汚れているじゃない!
早く片付けなさい!」



『申し訳ありません…
キャンディス様』



私は夢を見ているのだろうか…
今の私が置かれている状況はノーレン家で使用人をしていた時だ。


殆どのことを忘れていたのに今思い出すのだろうか…
それとも今までの出来事がすべて夢で、これが現実なのかもしれない。


私は未だにノーレン家の使用人で、セブやハーマイオニーは嘘なのだろうか…


「何をもたもたしているんだい!
使えない子だね」


ずっと私に命令してくるこの女性…
キャンディス・ノーレン。
この家の当主、ファビリス・ノーレンの妻であり、カミルの母親だ。


『ただいまやります!』


「何だい?あんたは口の聞き方も知らないのかい!?
やりますじゃなくて致します。
それくらい覚えときな!」



(うっ……!)


脇腹を蹴られて、その反動で地面に突っ伏してしまった。
でも、声を出すことはできない…


出してしまえば最後、なんといわれるか分かったものじゃないから…



「この子、使用人のくせに寝ているわよ?
お母様」


「本当ね…さっさとしなさいと言っているのが聞こえていないのかしら?」



再び脇腹を蹴られる。
あまりの痛みに意識が遠くに引っ張られていきそうになるのを必死になって戻した。


カミルの上には2歳年上の姉がいる。
ジャネット・ノーレン。


魔法族の家系に生まれながら魔法が一切使えない。



いつも人を蔑むことしかできないこの人が、私は時たま悲しくなる。



「何してるのよ。
掃除が終わったら夕飯を作るのよ!
分かった!?」



私はただ頷くしかなかった。




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