炎のゴブレット
□夢逃避
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私は昔住んでいた家に今の姿で立っていた
目の前には当時の私
4歳位だった
背が高くてカッコいい父親
いつもニコニコ笑っている母親
やがて……
この日が一番思い出したくない場面ということに気づき始めた。
私が近所の友達と遊びに出ていた。
いつものように、帰ったらクッキーが用意されていることを考えながら私は家に帰ったのだ。
気づくと、今の私は当時の私になったような目線に立っていた。
家に帰るとクッキーのいい匂いはしない…
中から楽しそうな2人の声も聞こえない…
不思議に思いいつものようにドアを開けた…
そこで目に入ってきたのがあの日と同じ状況……
父がうつ伏せに倒れ、母はひたすら泣いていた
『おかあ……さん…?』
声をかけても返事はなかった
啜り泣く声だけが響いていた。
父のお葬式が行われることはなかった
泣き疲れた母に、いつものような笑顔が戻ることはなかった。