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□後ろから
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「あ、報告書書かなきゃ」


思い出したら即行動。
今日中にキリノさんに渡さなければいけない報告書を忘れていて、部屋で机に向かって書いていた。
うーん、いつも思うけど報告書って何書けばいいんだろ。なんて思いながらも適当にペンを走らせていたら、


「ユメー」
「今忙しいからあとで」


部屋にチェルシーが入ってきた。
きっと暇だから来たんだろう。構いたいのは山々だけど、報告書を後回しにすると色々とあとで面倒だから、振り返らずに紙と睨み合っていると、のしりと背中に乗っかる重み。


「ボクを後回しにするなんて良い度胸です」
「ごめんごめん、これ終わったら構ってあげるから」
「…ボク、待つの嫌いです。早くしてください」
「わかったよー…」


そう言ってぽすり、ベッドに腰掛けて足をぶらぶらさせるチェルシー。それが可愛くてぼーっと眺めていたら目が合って、不機嫌そうに「早く手を動かしてください」と言われてしまった。
全く、生意気な王子様だ。そんなところもまた好きなんだけど。
よし、報告書早く終わらせよう。

5分くらいして、大体半分くらい書き終わった。
自分の語彙力と文章力がないのが読み返してて悲しいけど、これならあと少しで終わりそうだ。
これが終わったら思う存分チェルシーといちゃいちゃするんだ!と意気込んでいたらふいに背中が暖かくなって、一瞬ふわりと体が浮いた。


「よいしょ」
「………なにしてんの?」
「こうすると退屈しないなぁと思って」
「いや、やりにくいんだけど」
「気にせず作業を続けてください」


今の状況は、後ろから抱き着いているチェルシーの足の間に私が座っている状態。体が浮いたのは、チェルシーが私の後ろに体を滑り込ませるためらしかった。
ぎゅう、と後ろから抱きしめられて肩に顎が乗っかる。耳には吐息がかかって…


「(し、集中できない…!)」

「ユメは柔らかいですね」
「…それ、太ってるってこと?」
「違いますけど、このぷにぷに具合がたまらないんです」
「あ、ちょっと…!」


ふに、と脇腹を掴んだかと思えば、二の腕の肉を摘んだり。どこも最近気にしてる部位…!この男、人のコンプレックスばかり…!ぐぬぬ。
ていうか、体密着しすぎてほんとに集中できない。頬にはチェルシーの金色の髪が当たってくすぐったい。耳に息かかるし…。


「こっちも柔らかい、です」
「ちょ!ど、どこさわって…!」


今までお腹や二の腕を触っていたと思ったら、その手は太ももまで伸びていた。摘む、というよりは、撫でるような手つきにぞくり、背中が震える。


「肌すべすべですね」
「ん、…っ」


耳元で低く囁かれ、指先は太ももを撫で。おまけにふう、と耳に息を吹き掛けられてしまっては体から力が抜ける。絶対、わざとだと思う。
ペンが手から滑り落ち、徐々に太ももの内側に移動する指に一挙一動に反応してしまって。
ぎゅっ、とチェルシーの服を掴んでふるふると首を横に振るも、手は相変わらずいやらしく太ももを這っていく。
ああ、報告書書かなきゃ…。でもこんな状況でそんなの、無理に決まってる。


「ふ、ふぁ……!」
「ユメ…可愛いです。ムラムラします」
「ひ!チェルシー…!や、やめて、って…!」


うなじに唇をつけ、ちゅうっと吸われる。
前屈みになって体を震わせたら、覆いかぶさるように後ろからチェルシーが抱き着いてきた。


「ボクを誘惑するユメが悪いんです。責任とってください」
「り、理不尽…!」


ああでももう、そんな甘えた声で言われたら、だめだ、私!





後ろから。
(ふ、…!やめっ)
(無理です、気持ちいいことしたくなりました。報告書なんて後回しです)
(や、キリノさんに渡さない、と…!)
(…こういう時にボク以外の男のこと考えないでください。痛くしますよ?)
(そ、それはやだ…!)

(ごめんキリノさん!)








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