legendary girl

□two
2ページ/4ページ



『…はあ、』


つい先ほど学園に着いた私はなにやら大きいマップを見ながら理事長室に向かっていた。


『広すぎるんだけどこの学園…』


マップを見るのも憂鬱になるくらい広い。


それに方向音痴なのか、道を間違えては行き止まり、また道を間違えては知らない道を通る。


戻っても左右同じ廊下でどっちか分からない。


『難しい、難しいよこの学園…!なんでお父さんお母さんはこんなときな仕事なの…!』


ぐちぐちと言いながらもいろいろな道を通ると、理事長室らしき大きい扉が出てきた。


『でか…』


そうだな…例えるならハリー・○ッターに出てくるような大きい扉。


いや、もうむしろハリー・○ッターなんじゃないかとか思えてくる。


パッと壁を見れば理事長室というプレートが目に入った。


『理事長室だぁ…っ!』


なんだろう、この嬉しさ。


変に喜びながらも腕時計を見ると、予定時間よりも10分過ぎていた。


『や、やばい…っ!』


急いでノックをすると、中から男性の声がした。


私は縮こまりながらも失礼します、と中に入った。


『お、遅れてすいませんっ!』


「あ〜、いいよいいよ!どうせ迷ったんでしょ?」


『ま、迷いました…。』


「仕方ないよ、広いんだし!」


そう言うと男性は腰掛けて、と私の前にある椅子に誘導した。


「で、さっそくなんだけどここが男子だけっていうのは知っているね?」


『あ、はい。』


お母さんに聞かされt……


………


『え?』


「え?」


聞かされてないよ!?


『ど、どーゆうことですか!?』


「あれ?なにも聞かされてない?ここ男子だけが通う学園、その名もっ、成姫男学園だ!」


『なり、きだ…学園…?』


聞いたこともない学園なんだけど…。


「ここは全寮制なんだ!知ってる?寮は、ソーレ寮、ステラ寮、オンブラ寮があるんだ。」


『ソーレ寮、ステラ寮、オンブラ寮ですか…。』


全寮制はもう聞かされたから特に驚くことはない。


ただ、寮ってそんなにあるんだと思った。


「君にはその中で最も上のソーレ寮に居てもらうね。」


『はい、わかりました。』


私は別に最も上とかどうでも良かった。


ただ気になったのはどんな人がいるのか、ということ。


最も上と言うくらいだからそれなりの人がいるんじゃないかなって思う。


こんなにも大きい学園。


お金持ちが通う学園だということはいくら私でも検討がつく。


「ソーレ寮に今いるのは10人だ。10人それぞれ世界有数の大企業の御曹司だったり、大きな会社を立ち上げた両親のご子息だったりする。」


ほら、やっぱり。


『あのっ…、そんなところに私がいて良いんですかね…?』


だって私の家、お金持ちっていうほどじゃないし。


「……君はご両親からなにも聞かされてないのか?」


『えっと……よく、意味がわからないんですが…。』


特にこれと言ったことはなにも聞いていない。


「……やっぱりなんでもないよ、気にしないで。」


『え?…あ、はい。』


私はこのとき、現実というものを甘く見ていたのかもしれない。


「じゃあ次、クラスの話をするね。この学園は1年、2年、3年と普通の高校のように学年が分けられている。」


『はい。』


そこ普通なら校舎も普通にしようよ理事長さん…。


「そしてクラスだ。

クラスは学年ごとにA、B、C、D、Eクラスがある。
だがこの学園には指名された者にしか入れないクラスがある。」


『指名された者にしか入れない…』


どうしてそんなクラスを作ったんだろう。


「聞きたそうだね。」


『え…っと、』


なんだかすべてを悟られたような感じで恥ずかしくなった。


「そのクラスにはさっきも言ったソーレ寮の10人がいるんだ。」


ああ、あの世界有数大企業の御曹司だったりする人たち…。


「あの10人誰もが大企業のご子息やらだ。」


だんだん言いたいことがわかってきた。


「…狙われる、確実に。

彼らとクラスが違う者たちはそれこそ彼らを慕う。それどころか恋愛感情まで持つ者もいる。」


『…はあ。』


なんだかよくわからない話に入り込んだ…。


「君が彼らと違うクラスに入ることで、君が犠牲になる。」


『…え、なんで私が…?』


私、犠牲になる理由もなければ犠牲になるパターンもないよ?


「新しい物が手に入れば誰だってそっちに興味が湧くだろう?それと同じだ。」


ああ、なんだ…そーゆうこと。


別にいじめなんか気にしないのにな。


「…おかしな質問してもいいかな?」


『…へ?……あ、はい。』


急だから変な声しか出なかった。


「…君は、伝説を信じるかね?」


意を決して聞いてみればこんなこと。


そういえば昔、おばあちゃんに言われたことがあった。


『伝説は人が初めて信じて伝説になる。その伝説が今もなお、受け継がれているならばそれは真の伝説と言える。』


「…ほう。」


幼い頃の私はその言葉があまりにも理解できずにいて、気にしてなかった。


ちょっと気になり始めたのは確かおばあちゃんが亡くなったときだっけ?


今でも時々その言葉の意味を考えてしまう。


でも私はバカなのか、やっぱり理解ができずにいる。


『幼い頃、おばあちゃんがそう言いました。どこかで私が伝説という言葉を覚えて…、伝説のことを聞いたらそう返してきました。』


「…君の叔母様も君と似て真っ直ぐなんだね。」


『私が真っ直ぐだなんてそんな…。確かにおばあちゃんは曲がったことが嫌いでしたけど。』


「君は真っ直ぐだ。だからだろうね、伝説に対するその言葉をくれたのは。」


よく分からない話。


なんだか難しい話ばかりだなぁ。


そう思っていると、理事長さんが誰かを呼んだ。


理事長さんの目線を追うと、ドアの前に怖いくらい顔の整った人が立っていた。


「失礼します、櫻井です。お呼びでしょうか理事長。」


「理事長なんて呼ぶのやめようじゃないか、堅苦しい。」


「いえ、失礼に値しますのでどうか理事長とお呼びさせてください。」


「ちぇっ、仕方なあ。」


私は目の前の後継にただびっくりした。


何か知らないけど理事長さんの態度、さっきの真面目な感じと反転してるし


よく分からないやりとりを櫻井さんとかいう人としてるし。


「櫻井、この子を案内してあげなさい。」


「はい、かしこまりました。




それでは行きましょうか。」


その人は優しく微笑んでそう言った。


不覚にも少しときめいた自分がいたのは内緒。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ