11人family

□そして夜が明けるまで
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_宏太side


…なんだろう、なにか胸騒ぎがする。


というより…嫌な予感がする。


宏「…ま、気のせいか。」


光「なに、どったの?」


雄「宏太もついにバカになったんだなっ!」


宏「お前らと一緒にするな!」


慧「ちょ、宏太までバカにならないでよ?バカになったら俺出て行きそう。」


宏「えー…そこまで?」


なんて皆で話してると玄関の方でドアが開いた音がした。


あれ?今日誰か来る予定あったっけ?


いや、なかったよな。


入ってくるとしたらあいつらしかいないはず…。


慧「もう帰ってきたのかな?」


光「え、早くね?」


そう言ってるとリビングのドアが開いた。


宏「…え?なにして…………」


入ってきた涼介たちを見ておどろくしかなかった。


大「…名無し、連れ去られてた。」


名無しを抱き上げていた大貴がぽつりと言った言葉。


俺はそれに耳を疑った。


慧「連れ、去ら…れ…?」


さっきまで楽しそうに喋っていた俺たちの空気に重い物がのしかかってきた気分。


光「…と、とりあえずソファーに寝かそ!」


名無しを優しくソファーに寝かせる。


とりあえずタオルケットだけかけておいた。


宏「なにがあったんだ?」


名無しは部屋着のままだし、顔は傷だらけ。


服だってボロボロで…もうタンクトップ見えてんじゃん。


誰だよ、こんなことしたの。


侑「3年の川村って奴が全ての原因。」


龍「連れ去ったのも、暴行したのも全部あいつ。」


皆からは怒りが感じられた。


そりゃそうだよな、薮家でたった一人の女の子がこうなってんだ。


皆が大好きな名無しが。


許せるはずもない。


涼「とりあえずやり返しといたけど。」


わかってる、涼介がそんなことじゃ収まらないのは。


そんなとき、


『…ん…っ』


名無しが目を覚ました。


裕「名無し!大丈夫?」


『…ひっ…!?や……いや…!たすけ、…っ助けて…』


雄「名無し…?大丈夫、俺たちだよ?」


『ふぇ…っ、いやぁ…っ』


俺たちにまで怯える名無し。


なんだよ川村って奴。


名無しにどれだけ酷いことしたんだよ。


大「…名無し。」


大貴は怯える名無しをそっと抱きしめた。


大「大丈夫、ちゃんと見て?いつも一緒にいる家族だよ。」


『…あ、あ…っ、みんな…っ』


名無しは大貴の腕の中で泣きじゃくる。


ただひたすら、ごめんなさいと謝りながら。


光「謝らなくていいから、ね?」


慧「もう大丈夫、ここに怖いものなんてないよ。」


いつもおちゃらけている光でさえも深刻な顔をした。


『…、ごめ、なさ…』


龍「謝らなくていいんだよ?みんなそう言ってんだから。」


龍太郎はいつ作ったのか、ホットミルクを名無しに渡した。


龍「それ飲んで、少し落ち着こう?」


『ありがと…』


名無しは息を吹いて少し冷ます。


こんなときでも可愛いと思った。


圭「名無し、なにも話さなくていいからね。」


光「そうだぞ、思い出さなくていい。」


『…うん…』


それはそうと…


名無し、痩せたな。


宏「…飯、食うか!」


『うん、食べる…』


久しぶりに名無しが食べるんだ。


頑張って作ろう。


俺はキッチンと向かい合って料理を始めた。
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