Let's “ family ” !

□4.“跡”
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数日ぶりに訪れた村の周りにはディーノの部下たちが部外者を中に入れないように村の周りを警備していた。

道に当然のように転がっていた死体はすでに埋葬されて,襲撃された直後の村とは流石に変化はあるものの,ほとんどはあのときと変わっている様子はなかった。

笑美の家はまだ調査が始まっておらず,机の上にはすでに腐ったバースデーケーキが放置されていたままだった。
時計は,あのときから止まることなく時を刻み続けている。

あの時から,時が止まっているようで止まっていないちぐはくさに,永和は寂しさに微かに目を細めて口を強く噛んだ。

「…」

ディーノたちには外で待ってもらうことになって,笑美は内心ひどく安堵している。
その理由は曖昧で,はっきりと言えることではないが,もしかしたら部外者をこの家に入れたくないと,そう思ったのかもしれないと笑美は頭の片隅で推測した。



笑美は自分の部屋に入ると,適当な旅行カバンを引っ張り出して荷造りを始めた。
これからキャバッローネファミリーのもとで居候するにあたって,向こうに何もかもを用意してもらうわけにはいかないからだ。

着替えや必要な日用品をとにかく詰め込んだ。そして,悠莉と無邪気に笑う自らが写った写真をそっと服の胸ポケットに大事そうにしまった。


そういえば,と,ふと思い出す。
笑美が捨てられていたときに握っていたという銀のペンダント型の懐中時計。

曖昧な記憶を頼りに引き出しの中から取り出すと,それを見て笑美はしばらく呆然とした。


もう動いていない懐中時計には,あのトカゲの独特な紋様が掘られていた。

間違いなく,エストゥーリオファミリーの紋様だった。



(何でこれを,私は持っていたの…?)



その疑問に対する答えは,すぐに予想することができた。

それは,笑美含め彼女の家族が,いずれかの形でエストゥーリオファミリーに関わっていたということ。

自らがエストゥーリオファミリーに関する何か重大な何かを持っているとすれば,村が襲われたことも,笑美がさらわれかけたことも,説明できる。


しかしこれは,推測で,真実ではない。



(私は,真実を,知るんだ。)


決意は,確かに笑美の心に強く突き刺さり,じわりと溶けて馴染んだ。





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