Let's “ family ” !

□5.“追”
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信じられなかった。
信じたく,なかった。


「何よ,これ…」


目の前の情報が真実として受け止めることができず,ただ声と体が震えて,思考が真っ白に染まってから,過去の記憶がぐるぐると頭を回る。


呆然と画面を眺めていると,何の前触れもなく画面に映像が流され始めた。あらかじめ仕組まれたプログラムらしい。

映ったのは,笑美の面影が残る,穏やかな雰囲気を纏う女性だった。


『笑美がこれを見る頃には私は死んでいると思います。それでも,貴女に残さなければならない言葉があるのです。


もう知っていると思いますが,貴女は人体実験の被害者で,そして私と夫は,その研究チームの一員でした。

私としては大変心苦しかったのですが,夫は,これがファミリーのためだと言って聞きませんでした。
言い逃れをするつもりはありませんが,笑美のことを私だけは愛していると,そう伝えたかったのです。

私はこれからイタリアに戻って貴女を連れ出すつもりです。と同時に,数年ほど能力を封じ込める抗体を貴女に注射で射とうと思うのです。

これを見ているのが笑美なら,きっと私の計画は成功しているのでしょう。

しかし,抗体は長くて5年ほどで効力が弱まってきます。
研究所には,成功体をいざというときに能力を無効化するための薬があるはずです。

手にいれることはとても困難ですが貴女が望のなら,そしてその力があるのなら,好きに能力を自分のものとするか,捨てるか選らんでください。
貴女は,貴女のものなのですから。



最後に,私は貴女に,ずっと平和に生きてほしいと,祈っています。…愛しています。

たった一人の私の娘。笑美へ。
貴女の母親の祈より。』



そこでビデオは,終了した。
記憶の限り初めて見たはずの母はどこか懐かしくて,そして,泣きながら笑っていた。




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