Let's “ family ” !

□5.“追”
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イタリアから長い長い道のりを経てたどり着いたそこは,まさに廃墟やお化け屋敷そのものだった。
周りには民家など一切なく人気もないことから,この家の存在自体知る者はいないと思われる。


木造二階建ての建物は扉に鍵などかかっておらず,部屋の構成と言ってもただ一つの広いダイニングだけの,ひどく生活感のない家だった。


長い年月使っていない部屋には埃がたまり,扉を開けた瞬間ネズミやらムカデやらの不衛生そうな生き物たちが大勢散らばっていった。




「こりゃ何年も使ってねぇな…」

汚ならしい部屋に嫌そうに口元を歪めるロマーリオ。

笑美も,本音は気持ち悪くてこんな部屋に一歩も入りたくないし一秒もここにいたくもない。
それでも,

(ここに,手がかりがあるなら…!)

そう,信じて薄暗い部屋に足を踏み入れる。
と言っても探すほど中には物はなく,机の上に金庫が一つ置いてあるだけだった。


改めて見てみると1〜9のプッシュボタンと小さな画面。よくあるテンキータイプらしい。

しかし,ボタンを押しても何の反応もない。


「もしかして電池が切れてるんじゃねーか?」

「…みたいね。」


早速部下の人たちに電池を買ってきてもらい電池を交換すると,電子音と共にパネルが再起動した。


「あ…動いた。」

「あとは暗証番号なんだよな…」


はっきりとした暗号に繋がるような情報はなく,ディーノは思案して顎に手を添えた。


「あの懐中時計には他に何かねーのか?」

「あったらとっくに言ってる。」


壁にぶつかった。
目の前に手に入れたいものがあるはずなのに届かないことが歯痒くて,笑美は奥歯を噛み締める。


懐中時計には紙と文字盤以外何もない。


(文字盤が指す時刻…?)

時計は,4時15分で止まっている。

(1645か0415?)

恐る恐るそれらを入力してみたが,あっさりと機械に拒まれた。住所の番地で試してみたがお粗末な結果となった。
ピーという電子音にバカにされたような気がして笑美は恨めしげに画面を睨んだ。

(私のことを知りたければってこれじゃあわからないまんまじゃあ…?!)


「私の…こと…?」


懐中時計を裏返すと,“ 笑美”という文字と,4/3と刻まれている。


「もしかして,」


0403,と打つ。


「私の誕生日…?」


かちゃりと,


鍵が解除される音がした。






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