虹物語

□第14Q「…おいし。」
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海常と誠凛の練習試合の後,あれほど険悪だった黄瀬と椿姫の仲は徐々に柔らかいものとなり,多少は会話を交えるようになった。
と言っても授業中に黄瀬の質問に椿姫が答えたり,教科書を忘れたら互いに教科書を見せてやったりと,ひどく義務的で,他愛もない,普通のことであった。

そんな普通なことであるが,黄瀬ファンは若干羨まし恨めしな目で椿姫を見るのは必死であった。

まぁ次の席替えまで辛抱かと椿姫は思いつつ,今日は女子の数人グループに体育館裏に呼び出されてたっけとぼんやり校庭を眺めた。


どうせーーー…


『ちょっと黄瀬君の隣だからって調子乗らないでくれる?!』


という迷惑千万この上ないことを口うるさく言ってくるに違いない。
面倒だ。どう考えても黄瀬と隣の席になったことは不幸でしかない。

元々黄瀬には特に好感を持っていない椿姫は,現実の男に恋だのなんだのは期待していない。今まで何人と遊んできたかも分からないチャラ男に顔面だけで惚れるほど椿姫は安くないつもりだ。…恋など経験したことはない彼女の持論である。



それに,




椿姫(今日は大切な日だから悪いけどお呼びだしにはお応えできないのよね…)






本の発売日だから。




完全にお呼ばれをスルーして翌日彼女は平然と登校してきたそうで。






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