虹物語

□第16Q「遊びましょ?」
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秋「つまらないわー。」


盛大に息を吐いた後,秋はややわざとらしく叫んでみせた。
そんな言葉に反応してその場にいたほぼ全員の女子が彼女にクスクスと笑いかけた。



洛山高校に入ってきて早2ヶ月。
新入生在校生もろとも新しい環境に慣れ,どこの部でも大体の個々の実力が確立される。それはこの女子バスケ部も例外ではなく…。


秋「…」


口許に笑みを張り付けながら秋は雲一つない紺碧の空を仰いだ。
ちなみに秋達女子バスケ部は,体育館のスケジュールの問題で今日はただひたすらに外周を走っている。
如何せん,体育館のスペースは限られているので毎日体育館を使えるというわけにはいかないのだ。

洛山バスケ部に入部してからすぐに実力が認められてユニフォームを貰った。
そして一ヶ月も経たずにスタメンに入り上級生を圧倒。練習にもすぐに慣れて飽き始める。
そして現在,彼女さえ出れば試合には必ず勝つので,彼女が絶対的なエースであり,しかし彼女を妬むことはほとんどなかった。それは彼女の明るい性に,執念とまで呼べる練習量故である。


いつもは例えつまらなくても,ストイックに練習を積んでいたが,ついに秋にも飽きが限界に来たらしい。




秋「あ,そーだ。」


突如,集団からずっと先を走る秋は何やら思い付いて踵を返した。まだ外周を走るチームメイトにはすれ違い様に一言断って,彼女は体育館に向かっていた。



秋(確か今日はー…男子バスケ部が体育館を使う日だったから…)



バッシュの入った袋片手に掛ける秋の横顔は,新しい玩具に食い付く子供のように爛々と光輝いていた。





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