虹物語
□第7Q 「目標を叫べ!!」
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音「嘘…。」
唖然として音は呟いた。
一年生対二年生のミニゲーム。
ついさっきまでは大衆の予想通りに二年生の一方的ゲームだったが,今や同点にまで追い込まれている。
ふと考え事をしているうちに何があったのかを理解するために試合を凝視して,分かった。
パスが途中で大きく向きを変えられている。
その向きを変えている張本人とは,
黒子テツヤ。
帝光中学出身。
詳しくは知らないが,キセキの世代と呼ばれる人達と共に試合に出ていたが,その存在の薄さから幻の6人目と呼ばれていたらしい,のだが。
音はキセキの世代などと言う存在に関して全く耳にしていなかったことで,彼のプレイスタイルには驚かされるが,キセキの世代に対する凄みは一切合切感じられなかった。
音(…暫くバスケから離れてたから,当然ですよね。)
ぽつりと心の中で呟き,ラストをアメリカからの帰国子女,火神大我のダンクで決められたのを見届けた後も,呆,と軋むゴールを少しの間見続けた。
去年一年生のみで決勝リーグまで進んだ二年。
本場仕込みの帰国子女であり天賦の才能の持ち主,火神大我。
キセキの世代とコートに並んだ,類い稀なるパスセンスを持つ,幻の6人目,黒子テツヤ。
凄い。
もしかしたら,このメンバーでなら,IHだって夢じゃない。
そう思うと,自然と口許に笑みが浮かんだ。
Dreams come true.
願いが,叶う。
夢が,夢じゃなくなる。
そう思うと,
私はなんて,
音「惨めなんでしょうかね…。」
自分でも聞こえないような微かな声で,囁くと,
楽しそうに和気あいあいとする彼らに背を向け,重く左足を踏み出した。
黒子「…。」
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