FAIRY TAIL
□この手で掻き消せるなら
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『……ごめん、急にこんなこと言って……忘れて、いいから』
そう言って、離れようとするフィネア。しかし、一瞬見えた表情に、考えるより先にその華奢な体を引き寄せていた。
『! ……冥王、さん……?』
「……そんな顔をしているお前を、放っておけるわけがあるか」
声に比例し、表情までが悲しげだった。放っておけないのは、惚れた弱みと言ったところか。
ここで立ったままも何だろう。フィネアの手を引き、玉座の間の奥にある、マルド・ギールが使っている もう1つの部屋へ向かう。ソファーに座らせ、自分もその隣に座った。
『……夢を見たの』
小さく呟き、マルド・ギールの肩に頭を預けるフィネア。
『冥王さんが……いなくなる夢…』
「――…」
『…おかしい、よね。ゼレフ書を消し去られでもしない限り、悪魔に死なんてないのに』
それでも、来ずにはいられなかった。
存在を確かめずにはいられなかった。
そう言いたげなフィネアの顎を掬い上げ、そっと唇を重ねる。すぐに離すと、目の前の黒曜石が僅かに揺れていた。
『マルド・ギール……』
再び抱きついてくるフィネア。その背中に腕を回し、安心させるように呟いた。
「いなくなったりなど、するものか。
――マルド・ギールは、ここにいる」
『――…』
腕の中で小さく頷いたフィネアの頬を伝う一筋の雫を拭うのを一瞬躊躇った自分には、気づかないふりをした。
この手で掻き消せるなら
(いつか消えてしまうんじゃないかって、不安になる)(ならば消し去ってやろう)(二度と考えられないようにして)(考える暇など、与えない)
fin.