FAIRY TAIL
□離さないで
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「マルド・ギールは……貴方の望みを、叶えることは……」
「……君には無理だ。もう、眠るといい」
静かに指を鳴らす音が耳に届く。目に映るのは、Mard Geer≠ニ表紙に書かれた…ゼレフ書。
「でも分かっているよ、マルド・ギール。そう言っているけれど……君は僕を破壊することで、本当は彼女を……フィネアを――」
『――呼びました?』
「!」
声をかけたことで主の注意がマルド・ギールから逸れた隙に、本を手の中に収める。そして創造主の背後から、再び話しかけた。
『酷いですね、ゼレフ。貴方の身勝手な望みを叶えようとした彼を消そうとするなんて』
「……やぁ、フィネア」
黒い瞳がこちらへ振り向く。声音こそ変わらないものの、それは穏やかではない感情を含み持っているのが窺えた。
「君がここに来ていることは知っていたけれど……意外だね。誰にも興味が無かったんじゃないのかい?」
『いつの話ですか? 何百年も経てば、私にだって心を奪われる悪魔くらい見つかりますよ』
「…へぇ?」
口には出していないけれど、主は面白がっていない。目が明らかにそれを語っていて、自分でも思った以上に、状況を理解出来ていないドラゴンの子達の様子を気にする余裕が無い。
「傍観者≠フ立場を貫き通してきた君が助けに来るくらい惹かれているのかい? ……でも、残念だ。その本は、君が持つべきものじゃない」
すっ、と手を伸ばすゼレフ。私に向けられたそれを見て、嘲笑うように言った。
『――愛する者を、自ら炎の中に落とすような真似をするとでも?』
刹那、地面を蹴って上空へ飛び上がる。案の定、先程まで私が立っていた場所は、地面が抉れていた。
『勘違いなさらないで下さい。私はただ、マルド・ギールを連れていきたいだけなので。
ああ、ENDの書はどうぞご自由に。こちらも自由にさせて頂きます。
さようなら、ゼレフ。恐らく、もう貴方に会うことは無い』
「……君はそれでいいのかい? 僕が存在する限り、マルド・ギールはおろか、君も傍観者≠ゥら解放されないよ」
それでいい。
だって、私達の代わりに貴方をきっと破壊してくれる人が、そこにいる。
だって、不器用だけど私を愛し、私に愛されている悪魔が、ここにいる。
『ならば、その時まで逃げ切ってみせましょう。
私の為にも望みを叶えようとしてくれた――マルド・ギールの為に』
そう言い、青い蝶に紛れ、姿を消す。
最後に見たのは、こちらを無表情で見上げる創造主の姿だった。