七つの大罪
□言えない台詞
1ページ/2ページ
『ゴウセルの髪って、さらさらだよね』
酒場が駐留している近くの草むらに2人揃って寝転がっていると、後ろ(いや、頭上と言った方が正しい)から俺の髪を弄っていたリリスが、いきなりそう言った。
「そうか?」
そうだよ、と俺とは対照的な蒼い髪を揺らすリリス。
『思わず嫉妬するくらい』
「嫉妬…しているのか?」
『だって、女の私よりゴウセルの方が髪さらさらだなんて詐欺じゃない』
と言いつつ、どこか楽しそうに紅い髪を指に絡める。
そんな恋人に手を伸ばし、同じようにその蒼に触れた。
『!//』
「俺はリリスの髪の方がさらさらだと思うが」
『そ、そう?』
デジャヴだな、このやり取り。
『…ゴウセルにそんなこと言われるなんて、思わなかった』
小さな声だったが、顔を袖に埋めたリリスからは、確かにそう聞き取れた。
「? 何故だ?」
『いや…何て言うか……』
それきり黙ってしまうリリス。魔力が効かないから、何を考えているのか分からない。そんな俺の耳に、小さな声が届いた。
『と、とにかく……その……嬉しいってことよっ///』
顔こそ上げなかったものの、それが髪と対照的な色に染まっているのは容易に分かった。
「……リリス、顔を上げろ」
『……やだ』
子供か。
ぺしぺしと軽く彼女の頭を叩いていたが、言うことは聞いてくれそうにない。……仕方がないな。
「リリス、起きないと別れr…」
『それはやだ!』
言い終わる前に、がばっと顔を上げた恋人の唇を、素早く自分のそれで塞ぐ。
『……///』
「冗談だ」
そっと唇を離し、見ればリリスの顔は俺の髪の色と同じくらいになっていて。
『〜〜〜っ、ゴウセルのバカッ!//』
そう叫び、いきなり数本の水の槍を放ってきたが、ひょいとかわす。動揺するとこうなるから分かりやすい。いわば、俺の魔力が効かない彼女の心中を知る唯一の方法。
「いや、すまない」
可愛かったものだから、ついな。
なんて言ったら、また攻撃されるから言わないでおこう。
だが、それは大抵照れている時。ならば…。
言えない台詞
(言ったらどうなるんだろうな)
fin.