七つの大罪
□月明かりの下で
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満月が黄金に輝く夜。流れるように静かに吹く風に、そっと目を閉じる。すると、聞こえていた朗読の声がぴたりと止んだ。
「そんな所で寝ると風邪を引くぞ? ……いや、女神は病にかからないんだったか」
『寝てないわよ。っていうか、眠れない』
再び目を開けて即答すると、「そうか」と、やはり無感情の呟き。
「リリス」
ん? と返事代わりに視線をゴウセルに向けると、手招きをされる。
疑問符を浮かべながら、ふわりと飛んで屋根の上から見張り台へ移動する。
と、いきなり手を引かれた。
『!?』
反応出来るはずもなく、そのまま彼の腕の中に収まる。
『ちょっ、ゴウセル!?』
「寒い」
……え?
『…こんな所で本を読んでるからでしょ?』
「俺はここで本を読むのが好きなのだが」
『ならせめて……』
暖かくしてなさいよ。
その言葉は声にならなかった。
ゴウセルがさらに強く私を抱き締めてきたからだ。
『っ……//』
「温かいな……」
『ゴウセルが冷たいだけでしょ……//』
それでも、誰かさんのせいで熱くなってしまった顔にはちょうどいい。私は彼の胸板に頭を預けた。
「!」
息を飲む気配。閉じかけていた瞳を開けた。
「……あまり可愛いことをしてくれるな」
『……ゴウセルだけだけど』
こんなことするのは。
「……それなら、いい」
その言葉と同時に、唇がそっと重ねられた。
月明かりの下で
(この時間は私達2人だけのもの)(知っているのは私達以外に)(夜空に輝く月と星だけしかいない)
fin.