七つの大罪

□1年で最も甘い日を君と
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今日2月14日は、何処ぞの島国ではバレンタインなる、好きな人にチョコを渡す日らしい。昨日、仲間捜しに訪れた町で小耳に挟んだ話なのだが、何処からかその話を聞きつけたエリザベス&ディアンヌが、半ば引きずるように私を連れ出し、材料を買って 男性陣が食料探しに出掛けている間に厨房を借りてチョコを作ったのだけど……。


『いない』


何処へ行ったんだ、あの心は読めても空気は読めない大罪人は。


見張り台で1人、チョコを持ったまま ため息をつく。ここにいると思ったんだけどな。


下を覗くと、メリオダス達が外に出したテーブルに料理を運んでいる。もちろん、あの紅い髪は見つからない。


…今は捜すのをやめて、手伝いに行った方がいいだろうか。ディアンヌ達も、夕食の後で渡すって言ってたし。


『仕方ない、後にしよっか』

「何をだ?」

『Σうわぁ!?』


誰もいないと思い、呟いた独り言。まさかそれに返事が来るとは思わなかった。


驚いて振り向くと、そこにはずっと捜していた人物がいた。


『お、驚かさないでよゴウセル!』

「すまない、そんなつもりはなかったのだが」


そう言いながら眼鏡を押し上げるゴウセル。


「で、何を後回しにするんだ?」

『え、っと……』


先程と同じことを聞かれて言葉に詰まる。いざ本人を目の前にすると、なかなか切り出せない。


「……何か、隠しているのか?」

『……う』


先程からずっと、箱を持つ手を後ろに隠していたからか、核心を突かれる。


『…ゴウセルにあげようと思って』


そう言って、綺麗にラッピングした箱を差し出す。


『今日、バレンタインだから』

「バレンタイン……本で読んだことがある。好きな人にチョコレートを渡す日だと」

『そう、だから作ったの。…受け取ってくれる? ……!』


聞くと同時に、優しく抱き寄せられる。


「ありがとうリリス。……嬉しい」

『喜んでくれて良かった』

「……ちなみに、他のメンバーにあげていないだろうな?」

『え? うん、ゴウセルだけ』

「そうか……」

『……もしかして、義理チョコあげたかと思った? 私があげるのは本命だけよ?』


ずいっ、と箱をゴウセルの目の前に移動させる。


「そうだな……疑ってすまなかった」


そう呟き、私の顎を持ち上げたと思うと、ゴウセルは唇を重ねた。


『!//』

「心拍数が上がっているな……照れているのか?」

『う、うるさい……//』


赤くなった顔を手で隠そうとするけど、その前に動きを封じられる。


「リリス……」

『っ……//』


熱を帯びた金色の瞳に、私が映っているのが見える。


ああ、ゴウセルはズルい。


こんな時だけ、そんな顔をしないでよ――。


再び唇が触れあおうとした、その時。


「おーいリリス〜、ゴウセル〜」


名前を呼ばれると同時に、動きがぴたりと止まる。恐る恐る振り向いて下を見ると、案の定そこにはニヤニヤしながらこちらを見上げるメリオダスとバンがいた。


「飯だからさっさと下りてこいよ〜。今日も飲むぞ〜」


あいつら……絶対見てやがった!!


「……ちっ」

『(舌打ち!?)』


あのゴウセルからは想像出来ない音が聞こえてきた。余程邪魔されたのが気に入らなかったらしい。


2人がにやけているのは癪だけど、とりあえず助かった。感謝したい。


「リリス」

『?』


名前を呼んだかと思うと、ゴウセルは私の手から箱をひょいと取り上げ、耳元で囁いた。


「逃げられると思わないことだ」

『!///』


それだけ言い残すと、彼は見張り台から飛び降りた。


……逃げられたと思った私がバカだった。










1年で最も甘い日を君と



(どーしたリリス♪ 顔が赤いぜ〜?)(うるさい!!)(うおッ!?)(バン、リリスに近づくな)(2撃目ッ!?)



fin.
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