七つの大罪
□君色サブリミナル
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「お前はいつも、俺を目で追っているな」
その彼の一言に、私は思わず二度、三度と瞬きをする。そして、見張り台の柵に座りながらも自分を膝に座らせ、腕を回す人を見上げた。
『追っちゃ駄目なの? ゴウセルさん』
「むしろ歓迎するぞ? リリスの視線を独り占め出来るのだからな」
いつからそんなことをさらりと言うようになったのですかねぇ、ゴウセルさん……。
「だが、是非理由を聞きたいものだな。いつもこうして俺の傍にいるお前が、そうやって俺を見つめている」
そっと手が頬に添えられる。少し考えて、私は口を開いた。
『きっと、好きだからね。自然と目で追っちゃうんだよ』
「つまりは、俺が足りないと?」
『……どうしてそうなるの?』
「人は恋人に長く触れたりしていないと、相手不足で死にそうになるらしい。本に書いてあった」
『それ、心理的な問題でしょ? 大体、私のはそうじゃないわよ……』
そういうものなのかと呟き、空いている方の手で眼鏡を押し上げるゴウセル。
「まぁ、こうして傍にいるなら、俺もお前もそんな風になることはないな」
そう言って、するりと手を私の頬から顎へと移動させ、顔を近づけた。
そのまま唇が重なる。一度離れるが、すぐにまた距離はゼロになる。今度はさっきとは違う、深いキス。
『…っは……』
「っ……」
ああ、まるで毒薬を飲まされているよう。
積もりに積もった蝕まれた感情は、思考を、判断を、素通りする。
まさしく骨抜き。だけど嫌じゃない。
服の上の方のボタンを外し、外気に触れた首筋に離れた唇を持っていくゴウセル。舌先が肌を這った。
『……っ』
軽く歯を立てられ、小さく肩が跳ねる。そんな私を見て、大罪人は満足そうに金の瞳を細めた。
「…続きは部屋の中でするか?」
『…うん』
頷くと、ゴウセルは軽々と私を横抱きにして立ち上がった。そのまま、物置と見張り台を繋ぐ扉を開ける。
自業自得の被害に誘われた私は愚かね。
恋は視界を彩りすぎるから。
気づいた時には既に手遅れで。
それでも構わない――恋の不思議。
君色サブリミナル
(ねぇ、君色に染めていいよ―――)
fin.