FAIRY TAIL

□この恋戦、君の勝ち
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『冥王さーん』


ああ、やはり今日も現れた。


突如耳に届いた聞き慣れた声に、密かにそう思い、目を開ける。間を置かず、鮮やかな青い蝶が視界に映った。


まるで何かを守るように密集して羽ばたく無数の蝶は徐々に薄れ、消えていく。代わりに黒い影が現れた。


それはそうだ。何せこの女は、闇に溶け込むような漆黒の髪に、黒を基調とした衣装を纏っているのだから。


『どうしたの? 何か考えていたって顔ね』


フィネア。


我らが創造主・ゼレフに傍観者≠ニいう役割を与えられしエーテリアス。


―――そして、マルド・ギールがどれほど手を伸ばそうと、捕らえることの出来ない女。


「……どうしたらお前をこの腕の中に収めることが出来るか、策を考えていたと言ったらどうする?」

『あらあら、随分と諦めが悪いのね』


ふっと不敵に口角を上げると、口元を白い手で隠し、控えめに笑うフィネア。そんな小さな仕草でさえも美しい。


もうどのくらい、この攻防戦を続けているだろうか。分からない。むしろそんなもの、忘れてしまった。



まるで双子のように、同時期に創り出された悪魔。しかし、その道は2つに分かれた。


冥府の王≠ニ世界の傍観者≠ノ。


互いをろくに知ることもないまま、永遠に役目を果たす為、フィネアはマルド・ギールの前から姿を消した。


だが、歩んだ道は違えどやはり悪魔同士。闇が、より深く暗いそれに惹かれるように、お前はまた現れた。


この冥府の門(タルタロス)に……ひいては、このマルド・ギールの前に。


あの頃と何一つ変わらない。闇を具現化したような長い黒髪も、黒曜石の瞳も。


―――決して、引き千切って粉々にすることが容易ではない、傍観者≠ニいう見えない鎖も。


だからこそ、再会したあの時、密かに誓ったのだ。他の誰でもない、自分自身に。



ゼレフを破壊すると。



元々そうするつもりではいた。理由が1つ増えただけのこと。それでも、その理由が元々の理由よりも大切に思えてくるほどに。


いつの間にか――。
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