マギ
□独り占め
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『……はぁ』
「あら、どうされたのです、アリシア殿?」
宮廷内を従者と共に歩いていると、白瑛殿にばったり遭遇した。どうやら、小さくついたつもりのため息を聞かれていたらしい。
『白瑛殿』
「ため息などつくとは……さては紅明殿のことですね」
肯定形で言える彼女は、本当にすごいと思うんだ。
『そうなんです……聞いて下さいよ白瑛殿……』
―――――
『紅明! 何処にいるの、紅明!』
昨日のことだ。私は紅明に大事な話があったので、彼のいそうな所を捜し回っていた。
『紅明! ……全く、何処に行ったんだか』
めぼしい場所はすべて捜したが、あの紅は見つからない。また後日話そうかと、諦めかけていると。
「アリシア?」
『! 紅明!』
向こうから紅明が歩いて来た。私は小走りで彼に近づく。
『良かった、見つかって。何処にいたの?』
「書庫に。少し用がありましたから」
書庫…捜してなかった。
「ところで、何か用でも?」
『ああ、あるんだけど……貴方、目の下に隈出来てるわよ……』
「え、そうですか?」
『また徹夜したの……!?』
何度言ったら分かるの、という意味を込めてに言う。
「まぁ、このくらい いつものこと。気にしないで……」
ふらぁ……
『狽アっ、紅明ーーーー!!』
気にしないで下さい、と言いかけて、倒れるように寝てしまった紅明を、従者達に寝室に運ばせた。もう何度か、こんなことをしているのだ。