マギ

□独り占め
1ページ/5ページ

『……はぁ』

「あら、どうされたのです、アリシア殿?」


宮廷内を従者と共に歩いていると、白瑛殿にばったり遭遇した。どうやら、小さくついたつもりのため息を聞かれていたらしい。


『白瑛殿』

「ため息などつくとは……さては紅明殿のことですね」


肯定形で言える彼女は、本当にすごいと思うんだ。


『そうなんです……聞いて下さいよ白瑛殿……』


―――――

『紅明! 何処にいるの、紅明!』


昨日のことだ。私は紅明に大事な話があったので、彼のいそうな所を捜し回っていた。


『紅明! ……全く、何処に行ったんだか』


めぼしい場所はすべて捜したが、あの紅は見つからない。また後日話そうかと、諦めかけていると。


「アリシア?」

『! 紅明!』


向こうから紅明が歩いて来た。私は小走りで彼に近づく。


『良かった、見つかって。何処にいたの?』

「書庫に。少し用がありましたから」


書庫…捜してなかった。


「ところで、何か用でも?」

『ああ、あるんだけど……貴方、目の下に隈出来てるわよ……』

「え、そうですか?」

『また徹夜したの……!?』


何度言ったら分かるの、という意味を込めてに言う。


「まぁ、このくらい いつものこと。気にしないで……」



ふらぁ……



『狽アっ、紅明ーーーー!!』


気にしないで下さい、と言いかけて、倒れるように寝てしまった紅明を、従者達に寝室に運ばせた。もう何度か、こんなことをしているのだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ