Believe
□闇
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ハヤテ「あー、腹減ったー!」
トワ「さっき食べてたじゃないですか!」
ナギ「船戻ったら作ってやるから走れ。」
ハヤテ「走ってるよ!ナギ兄!」
下から聞こえてくる3人の声。
甲板から覗き込めば、ナギとハヤテとトワが走って来ている。
シン「船長とドクターはまだか…」
と呟いた言葉。なにやら焦っているようで。
ミネア「…シン、どうかした?」
と聞くと
シン「…海軍が来てる。」
見れば南の方にポツリポツリと3隻の船がこちらに向かってきている。
ミネア「あとどれくらいで追いつかれるの?」
とミネアが聞くと答えるのがめんどくさいのか、それとも状況が悪いのか…シンは眉間に皺を寄せ、黙っている。
ハヤテ「あー!ついた!腹減ったー!」
ナギ「まったく、お前の腹はどうなってんだか。」
トワ「疲れましたね〜。あ!ミネアさん!大丈夫でしたか?」
ミネア「え、えぇ。」
とりあえず返事はしたが…
本当にこの船に乗らなきゃいけないの?
という疑問でいっぱいだった。
シン「ナギ、船長とドクターはどうした?」
相変わらず、眉間に皺をよせながらナギに聞く。
ナギ「なにか気になることがあるらしい。だから、とりあえず船を出して明日の夕方またここで合流することになった。」
それを聞くとシンはすかさず動く。
シン「ハヤテ!碇をあげろ!トワとナギは帆を!」
シンの指示に動き出す。
動き出す準備をしているクルーをぼーと見つめている。
風が…
と思ったとき、
シン「お前、船に乗ったことはあるのか?」
と聞かれる。
ミネア「えぇ。」
シン「なら吐く心配はなさそうだな。」
ミネア「…!そんな事より、」
真剣な顔つきになったミネアを見て
シン「なんだ?」
と言う。
ミネア「風が変わった。あと数分後に東から西へと風が吹く。この風にのれば、海軍に追いつかれる心配はないわ。でも…」
少し呼吸を置くと
ミネア「その風に乗れなかったら北の風に変わる…海軍に追いつかれるわね。」
淡々と話すミネアに驚くシン。
ミネアの言っていたことは確かのようで…まだうっすらと感じる程度だが、確かに風は変わってきている。
こいつ…なぜそんな事が?
聞きたいことはたくさんあったが、とりあえず急いで舵の元へ戻る。
ミネアは甲板から街を見つめたまま。
その表情は遠くからでも分かるほどさみしそうな顔をしていた。
シンはミネアを見て、すぐに手元に集中する。
3.2.1...
シン「面舵いっぱーい!」
心の中でカウントして舵を回す。
カウント通りにきた風を味方に、ぐんぐんシリウスの船は進む。
そして海軍からも遠く離れ、風も海域も落ち着いた場所につき、碇を下ろす。
甲板に戻るとミネアはまだ遠く離れた街を見ていた。
ミネア「…月と星が見えたなら、空を背にして消えるがごとし…」
切なげに聞こえた歌は海のさざ波と一緒に消えていく。しかし、シンの耳には残っている。
…この歌…どこかで…
一瞬考えたが、思い出せない。
何故か、心がひんやりとするのは、ミネアが歌っていたからだろうか。少なくとも、こんなにもひんやりとした覚えは無い。
すると
ミネア「…どうかした?」
あの淋しそうな表情から一変し、最初にあった時と同じ表情をしている。
シン「いや。」
ミネア「そう。」
淡々と出てくる言葉。
それはまるでロボットのように。
2人の間には高い壁があるよう…
いや、ミネアの周り全てが壁で覆われているような…シンはそんな気がした。