「お姉様!」 「姐様!」 軽快な二つの足音が聞こえてきたかと思うと荒々しく引き戸が開き、元気な少女と少し怒っているような表情の少女が顔を出す。そして、二人はパタパタと一つだけ膨らんでいるベッドに駆け寄ると、その上へ勢いよく飛び込んだ。 「姐様、起きて下さい。」 「次の時間、授業だよー!!」 すると、元気な声の下からもぞもぞとベリリウムが顔を出す。寝起きなのか、焦点の合わない目のまま、のそりと上体を起こした。そうすれば、途端に少女達が其処に飛び込んで行く。 「おい、お前ら煩いぞ。いつまで騒いでいるんだ。」 「……ベッド……借りてるぞ。」 「借りてるぞ、じゃない。授業行け。」 「嫌だ。」 「無駄に“どやっ”って顔するな、うざい。」 鬱陶しそうに近付いて来た保健医の女性はベリリウムの首根っこを掴むと、軽々と持ち上げた。 「お前らも、こいつを呼びに来たのに一緒に寛ぐな。」 そして、ベリリウムの腰に抱き付いているサインとコサインを一瞥すると二人をぶらぶらと垂れ下げながら出口へと向かい、まるでゴミでも捨てるかのように廊下へと放り投げ、素早く引き戸を閉める。 が、一拍置いて開いたかと思えば、まだ眠そうなベリリウムに向かって忘れ物であろうメガネが本人と同じように放られ、引き戸は今度こそ閉められた。 「……姐様。大人しく授業に行きましょう。」 「…………分かった。」 |