絵のない絵本

□…どうしてもっと早く気づけなかったのか…
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……どうせだから、聴いてしまおうか。

そんな好奇心が全ての元凶。


とある知人(、といってもただのお隣だけど。)が、先日俺にこんなものを預けてきた。
その隣人は音楽の才能があるらしく、様々な音楽を作っては世の中に送り出している。
実は、俺も幼い頃から作詞作曲が好きで、色々やっていたのだが隣人と出会って以来、何故か遠慮してしまったいた。

まぁ、それはいいとして……。
隣人の顔は小さな頃から知っている。
幼稚園も小学校も中学校も一緒だった。つまり幼馴染。
高校は俺は平凡なところに行ったけど、隣人は私立の音楽高校に入学。
全然交流のないまま、今年の春に2人共大学生となった。

そこからがミラクル。
俺が行くようなハンパな大学に、隣人も入学していたのだ。
才能溢れる隣人が何故俺なんかが行くような平凡なところに?と思ったのだが、いつも隣人の考えていることは本当に理解不能なので、考えるのは諦めた。

で、大学が同じになってから音楽系のサークルに入ったら、なんとまたもや隣人が……。
いや、別に嫌ってわけじゃないんだ。
ただ、ここまで縁があると怖くなる。
小さい頃には周りからよく冷やかされたものだ。
特に思春期には男女がいると全部恋愛の方向に思考が行くものだから。


さて、そんな隣人が俺に預けたもの、それは……「一枚のCD」。

預ける理由も教えてくれなかったし、聴いていいのかどうかも確認する前に隣人はサッと自宅に戻ってしまった。

途方に暮れた末に俺が選んだのは、確認のために聴いておこう、という選択肢だった。

まずなんとなく気持ちを落ち着けるために、親父が転がっているリビングを通り過ぎ、台所で大声で何かを歌っているお袋の横を通り、ちゃらちゃらした格好でやっとご帰宅の妹の挨拶をスルーして、二階の自室にこもった。
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