絵のない絵本

□…白く、焼け落ちる夏、…
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あるところに、凄く豊かな国がありました。
水にも、緑にも、生き物達にも、恵まれた幸せな国です。
人々はそこで自然と共存しながら多少不便でも楽しい日々を送っていました。

しかし、ある夏、この国の資源を狙って他国が攻め入りました。

この国では争いごとなどが今まで一度もありませんでした。
それくらい平和な国だったのです。

武器を持たず、争いごとを好まない国民は大パニック。
抵抗できない国民を敵は容赦なく殺し、領地を拡大していきます。

辺り一面に咲いたひまわり畑も、透明で澄んだ綺麗な小川も、いつも広くて大きい空も荒れ果てました。

国民の生存はもう絶望的です。
いつの間にか、国民は負傷したギリギリ生き残っている何人かと、無傷なのはたった一人の少女となりました。

その少女は、国の中でも奥の奥にある秘密の隠れ家に住んでいます。
何故そんなところにいたのかは、少女の容姿を見れば一目瞭然です。

少女の長く艶のある髪は雪のように真っ白で、肌も綿菓子のように白く、体も小さくてまるでお人形のようでした。
全身真っ白なのです。何もかもが。
瞳もほとんど白、着ているシンプルなワンピースも、唇も色が薄く、まつげさえも真っ白でした。

その少女は生まれたときからそのような姿だったので、神の子として祀られていたのです。
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