読み物
□黄泉
1ページ/3ページ
黄泉の国ってどんなところなのかなぁ。
「あの世」って天国と地獄があるって本当かな?
『でも、こんな地獄なら行ってみたい……!』
あ、声に出ちゃってた。
実は私最近この漫画「鬼灯の冷徹」にハマってます!!
痛い子だと思っただろ。
いいんだよ、自分でも自覚あるんだ。
でも惹かれちゃったんだ、しょうがないじゃないかッ(憤怒
私のような普通の♀が鬼灯の冷徹の世界に入れたとしても、まず獄卒にすりゃなれないどころか呵責されまくって転生する前に消滅しちゃいますよーだ。
ドMの勝利だよね地獄ってさ。
……ふぁーあ、読みすぎて眠くなってきちゃった。
暇だしお昼寝しちゃいましょう。
起きたら地獄にいたりして――
『!?』
エッ!?
ちょっと待って。
ここはどこですか!?
私は誰ですか!?あ、私は紅葉です。
落ち着け。
足元を見る。……うん、土だ。
空を見る。……どんよりと曇ってる。
周りを見る。……霧に包まれてるけど、所々に寂しげな岩がある。
……と、言うことは!?
『地獄だーーーーーーッ!!!』
やった!ナニコレ!
タイムスリップ?!パラレルワールド!?
なんでもいいや。神様ありがとう!
普通地獄に落とされて神様ありがとうも何もないよねぇ。
……あれ?
なんで神様ありがとうなんて思ったんだ?
まるで地獄に来たかったみたいな感情が私の中に溢れている。
ここに来る前に私は何をしていたんだっけ?
記憶がすっぽりと抜けて落ちているのか、ド忘れしてしまったのか、とってもモヤモヤする。
頭を掻きながら適当に足を進めるが、行けども岩と霧で何が何だか分からない。
それどころか、自分が死んでしまったのかどうかという区別すらつかなくて泣きそうになってきた。
しかし、それで挫ける私ではない。
『誰かーいませんかー、いたら返事しろよ、というか誰か居ろ!』
寂しさを通り越してイライラしてきて、岩を蹴る。
すると、ちょっと小石を蹴り飛ばすくらいの気持ちで軽くキックしたはずなのに、岩はパァンッと砕け散った。
『え?ちょっ……嘘だろ無敵かよ!「うるさいんですけど。」
『おおおう!?』
奇声を上げながら振り返るとそこには目つきの悪い背の高いオニーサン。
そして頭には角、耳は尖っていて、片手に金棒。
『え?ベタな鬼?だったら虎側のパンツまでやろうよ。』
バコンッ!!!!
イベント会場か何か?と挑発するように相手を指差して笑っていると、オニーサンに思いっきりしばかれ、ギャグ漫画のように私は吹っ飛ぶ。
普通金棒で女の子殴るか?音がギャグ漫画じゃねーよ。お前鬼ーサンだろ。
『うぐ、なにしてくれる……!ココはどこ!?なんで私ここに居るわけ!?そしてアンタ誰!?』
「いや、あまりに五月蝿いのでつい。ココは地獄です。貴女がここにいる理由はこっちが知りたい。そして私は閻魔大王の第二補佐官の鬼灯です。」
質問攻めにすれば優位に立てるかと思いきや、コイツ、なかなかやりおる。
金棒で殴られても無傷だがそれなりに痛い頭を擦りながら立って、メンチを切るかのように相手を睨む。
『よくわからんけどまぁいいや。私は紅葉。鬼灯さん、文句があるなら正々堂々やりません?』
岩をも砕ける今なら勝てる。
腰に手を当てて挑発していると、問答無用で鬼灯さんは私の髪の毛を掴んで歩き出す。
身長差があるからこそ成せる技。
『イッ痛い痛い痛い!ちょ、ごめんって!放してよ!!』
これが、私の地獄の始まりでした。