読み物
□白澤
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『あれ今日は珍しく朝の突撃がないな。』
よく考えたらおかしな話だが、部屋が隣なのもあって毎日鬼灯さんが起こしにくる。
大抵私も早く起きてるので一緒に出勤することになるのだが、今日は珍しくそれがない。
鬼灯さんの部屋をノックすると、数秒後バタバタと珍しく慌てて起きたかのような動く音が聞こえて、笑ってしまった。
聞くところによると徹夜したらしい。
大王が心配しながらハゲちゃうよと声をかければ、お前がハゲろと辛辣な言葉を返す。
徹夜でもこの人は強い。
「あ。これから桃源郷へ行ってきます。注文していた薬が出来たようなので。」
『えっ私も行きたい!』
「……。」
『鬼灯さん?』
返答がないのでどうしたのかと首を傾げる。
大王は薬の研究なんて凄いなー、と能天気に笑っている。
そしてふと気がついたように口を開いた。
「薬ってことは白澤君に会うんでしょ?」
『白澤くん?』
「そう、彼、君と似てるよね。顔つきもだけど小賢しい所がさ。」
『ええっ鬼灯さんが二人も?いらない。』
ベチンッ
『いだい……』
問答無用で殴られたけれども、きっと愛があると信じて耐えた。
最近自分のメンタルの強さに驚く。
鬼灯さんは白澤さんとやらと一緒にされるのが屈辱だと睡眠不足に加えてイライラした様子を見せた。