読み物

□地獄四谷タクシー怪談
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ちょっとした出張の帰り。

『あ、鬼灯さん、バスもう行っちゃったよ。次は一時間後だって……』
「……タクシーで行きますかねぇ…」


タクシーかぁ官僚っぽくていいね!なんて呑気に構えていると、着いたのは有限会社朧車。
ああ、地獄では朧車がタクシーなのか。
まだ現世の感覚忘れてないんだと実感した。
まあ食べ物とかも目玉とか内蔵とかカルチャーショックで今も食べられないんだけどさ。

そこにいた2台の朧車たちは何やらタクシー強盗について話し合っている。
自分たちも関係がないわけではないだろうから、気になる話題なのだろう。


「――あっ、でも腹の中から突かれたら嫌だなぁー」
「あーそれは確かに痛いな。」
「その車部分ってやはり体内なんですね。」


鬼灯さんが思わずツッコむ。
私もちょっとビックリした。


「あっお客様……」「あっ鬼灯様と紅葉様!」

『どうもー。』


「こんな一介のタクシー利用でいいんですか?もっといいお車、龍とかお使いになれば……」
『おい龍があるなら言えや。乗りたかった。』


ジロリと鬼灯さんを睨むも、相変わらず彼は涼しい顔のまま。

「公費の無駄ですから。現世では安全も兼ねての専用車もあるようですが、地獄では己の身は己で守るのが鉄則です。」
「ああ……襲撃したところで普通に適わねーしな……」

若干引き気味に答える朧車たち。
まぁ鬼灯さん強いからなー。

朧車の一人が私に気を使ってくれた。

「でも紅葉様は女性ですし、お一人の時は気にした方が良いですよ。」
「いえ、紅葉さんは普通の女性以上の攻撃力がありますから大丈夫です。まぁ犯罪者がいずれ重傷患者になってしまうのも防ぐために、専用車を利用した方が良いかと……」
『おいしばくぞ。』


だめだ女扱いされてねぇ!!
ぐぬぬと唇をかみしめて耐える。
その様子を苦笑しつつ見ている朧車たち。

「でもさ、俺らだって乗り物界のアイドルじゃん?」
「うんうん。」
「はい?」『?』

なんだって?と鬼灯さんとふたりで聞き返せば、朧車たちは「俺ら翌」考えるとネコバスの仲間だし……」とのたまう。


これにはさすがに鬼灯さんも私も絶句。
険しい顔で見つめ返すしかできなかった。
それに気づくことなく朧車たちはネコバスが憧れだと話を進める。
どちらかといえば一反木綿だろうと鬼灯さんも反論していた。
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