夢の世界へ

□恋心〜第4章(紅side)
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さゆみちゃんから突然告げられた…。

「距離を置こう」




私が、いけないんだ…私が…。

さゆみちゃん…ねぇ…さゆみちゃん…

側に居ないと…寂しすぎるよ…。







恋心〜第4章…紅side




さゆみの出演する「ナポレオン」は、いよいよ明日開演になった。

100周年幕開け作品となって期待も大きかった。


プロだからこそ…さゆみは、私情を挟みたくなかったのだった。

だから、舞台に集中するためにゆきと距離を置いた…。

さゆみは、明日に備えて早い目に家路に着いた。

「明日は頑張ろう〜」

ボソッと独り言を呟いた。

ふとスマホを見てみると、メッセージが一件あるのに気がついた…。


再生を押そうとしたが、押さずに、、消去した。

メッセージの送り主はゆきだった。

「あかん…あかん…惑わされたら」




さゆみに、何度も留守電やメールを送るがゆきには、返事は来なかった。


公演が、始まるとばったりと連絡は途絶えてしまった。

さゆみは、公演の忙しさにゆきを少し忘れかけていた…。




今日も、いつも通りにファンクラブのみんなに見送られ劇場をあとにした。


マンションのエントランスに、誰か座り込んでいた。


「ゆき?」

その声に、はっと顔を挙げた。

「さゆみちゃん…」

さゆみに、ゆきは走りより抱きついた。

「さゆみちゃんに、会いたかった…公演中ってわかってるけど…忙しいし疲れてるってわかってるけど…」

さゆみの体にしっかり抱きつくゆきの体は冷えていた…。寒い中帰りをずっと待っていたのだろう…。

さゆみは、腕を伸ばしゆきを包み込もうとした。

が、思いとどまった。

「明日も早いから…帰って…」

ゆきが、目に涙をためてさゆみを見つめていた。

さゆみは、ゆきの絡まっている腕を外し行こうとした。

「嫌だ…さゆみちゃん…一緒にいたいよ…」

さゆみは、その言葉に立ち止まりそうになったが、振り向かずにマンションのエントランスを後にした…。
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