【book1】
□おとなたちの出発2
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「まあまあ!りうちゃん!よく来たわね!!」
「おばさん、こんにちは」
平泉のおばさんが笑顔で出迎えてくれる。
おばさんは母の義理の姉にあたるので、血はつながっていないはずなんだけれども、
朗らかで優しくてあったかくて、
なんだか母と似ていてりうはこのおばさんが好きだった。
「外は暑いわねぇ〜!今冷たい飲み物でも用意させるから。入って入って!」
りうは父の手を握り、ちょっと緊張した気持ちのまま玄関から中へ上がる。
この家は大きな一戸建ての家で、門のなかにひろく空間があり、
奥のガレージにはピカピカに黒く光る車がいくつも収まっている。
いかにも「洋風のお屋敷」といった風情で、りうの家と違って部屋もたくさんあるし、何より天井が高い。
これだけ広いと手入れが大変なのか、リビングに行くまでに庭の木を整えている人や、掃除機をかけている人を何人か見かけた。
ただでさえ広くて落ち着かないのに、知らない人に家の中をうろうろされるのなら、
今の狭い家で家族3人で暮らしているほうがいい、と内心りうは思った。
「あ!りうちゃんだ!」
「瑞貴!」
ぎゅっと足元に駆け寄ってくる。
3つも年下のこの子は、平泉兄弟の末っ子でとにかく笑顔がかわいい。
りうによくなついていたので、りうも瑞貴がかわいかった。
「ね、今日もゲームしてあそぼう?」
「う・・・ゲ、ゲームか・・」
「やらねーよな、お前何やらしても下手くそだもんな」
「海司!」
りうはテレビゲームが苦手だった。
大画面で迫力ある画面を見るのは好きだったが、
自分がやるとどうも思った方向に進まないし、3D画面を右往左往していると車酔いのようになってしまうからだ。
今年の正月も海司にこてんぱんにされて悔しい思いをしたのだが、
練習しようにもりうの家にはテレビゲームがないのだから仕方がない。
「瑞貴、りうとやっても結果はわかってるだろ?こいつどんくせーんだから」
「だって〜。お兄ちゃんたちみんな強いし、僕が勝てるのりうちゃんだけだもん!」
「っ・・・!」
「もー!やめなさいあんたたち!
・・・ごめんね?りうちゃん」
おばさんが慌てて止めに入ったが、りうはすでに涙目だった。
・・・to be continue・・・・・・