【book1】
□こどもたちの、今日1
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平泉家のリビングには、ダイニングキッチンがあり、黒の8人掛けのテーブルがある。
その半分は畳であり、窓には障子がはめてあり、和室の装いとなっている。
海司はそこにある大画面のテレビに向かってRPGをしているようで、
瑞貴はその脇でそれをみている。
りうも所在無くそこに座ってはいるが、もう一時間近く黙ってうつむいていた。
「・・・おい」
「・・・」
「・・おい!りう!」
「なによっ!」
いきおいよくりうが振り向く。
「いつまでそーしてんだよ!泣き虫が・・もう瑞貴なんかケロっとしてんだろ」
「別に泣いてないもん。することないからこうしてるだけだし・・・」
「・・・」
「・・・」
「お〜い!ガキンチョども!」
「そら兄!」
よどんだオーラの2人とそれに戸惑う瑞貴に比べて、
びっくりするくらいいつもと変わらぬテンションで、そらがリビングに顔をだした。
そらは親たちの見送りはせず、友達としばらく部屋にいたようだった。
今はもう制服からきがえてしまって、なんだか今風のオシャレな夏用のジャケットをはおっている。
「いってきま〜す!」
「ええっ」
「そら兄!どこいくの?」
「せっかく母さん達いないし出かけてくるね☆
あ、オレ夕飯いらないからゆっといて〜」
「夕飯いらないって・・・」
「あっ!!ちょっとそら兄!!」
バタン!!!
ーーーーーリビングに静寂が戻る。
「・・・ちくしょうそら兄・・・おれにりうと瑞貴の面倒押しつけやがって・・・」
「りうの面倒ってなによ!
いーよ別に!瑞貴のことだって私が見るし・・
海司も友達のとこに遊びにでも行けば??」
「んなことしたら昴兄に怒られんだろ!それに友達は
・・・近所にいねーし」
「え?なんで?」
「・・私立だからみんないろんなとこから来てる。俺も車で学校通ってるし。みんなの家もしらない。」
「・・・そーなんだ・・」
長い長い夏休み。
近所の行ったことがないところへ行ったり、なけなしのおこづかいを出し合って駄菓子を買ったり。
草木がぼーぼーに生えた茂みに秘密基地と称して居場所をつくったりして。
りうにとっての夏休みは友達と遊ぶことであって、
それで、ここに来るのが嫌だったのもある。
しかしここに住んでいる、このいとこがこんなことをいうものだから、
びっくりするやら、ほっとするやら、
りうはちょっと意外だった。
もしかしたら海司も、さびしいって思っているのかもしれない。
「・・・貸して」
「えっ、ちょっ・・何すんだよ!やるのか?ゲーム」
「だってこれなら私もできそうだもん!3Dじゃないし。地図とかもわかりやすい」
「・・・・正月にやったときお前が酔うっていうから、昔のやつひっぱりだしてきたんだよ」
「え?そうなの?昔の?」
「おう。これならおまえもやれんだろ。
おれ全クリしたから正しい道とか覚えてるし。最初からやるか?」
「うん!」
「え〜僕こないだ買った新しいやつやってほしいのに・・・」
瑞貴が文句を言う中、海司が本体のリセットボタンを押す。
しかしなんで海司は、この一時間近くもクリアしたやつをわざわざやっていたんだろう?と疑問に思いつつ、
りうはなんだか少し、楽しくなってきた。
・・・to be continue・・・