【book1】

□こころの、お別れ1
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お葬式には、思ったより大勢の人が来ていた。




平泉の仕事の関係が大きいだろう。

代々続く名家であるし、平泉の知名度と人望を思い知らせるような人の多さであった。

国会議員の妻と、妹夫婦が海外のテロに巻き込まれたとあって、マスコミも駆けつけている。
平泉のその秘書たちは参列者の対応以外にも追われていた。


昴はそれを横で見ながら、それでも父が昨日今日とできるかぎり自分たちの傍にいてくれたことに感謝した。

こういう仕事をしているので、もしかしたらこんな時も自分たちだけになるのかと不安に思っていたからだ。




兄の大地がいてくれたら・・・




もちろんすぐに連絡したが、ちょうどフィールドワーク中でなかなか連絡がとれず、
本人の声を聴けたのは昨日の夜のことだった。

今頃、飛行機に乗って日本にむかっているだろう・・・。









昴たちが亡くなった3人を見ることができたのは顔だけだった。



3人はすでにきれいに身支度されていて、
箱の中に入って顔だけがみえるようにしてあった。


詳しいことはわからないが、おそらく昴たちこどもへの配慮だったかもしれない。

テロにあった母親たちが、外傷がなかったとは思えないし、
実際ニュースでも多少そういった情報は流されていた。

母の顔はすこし、傷がついていた。


母は政治家の妻らしく、
また平泉家を守るために多くのことを手掛け、多くのことに耐えてきた。

ほんとうに、強く強く、そして心から優しい人だった。




みんなが次々にお焼香をすませていく。


参列者の多くがうちの関係者だった。




稲嶺のおばさんは若い頃は女優やモデルのようなこともしていたらしいが、
もう今は専業主婦だった。

二人の顔を見ていくのはおじさんの会社の人や、おばさんの友人たちで、
突然の別れにみんな涙を流している。






はじめ、みんなで3人の顔を見たとき、うちの兄弟は全員泣いた。

そらと海司はすがりついて号泣した。
瑞貴は今もずっと、しくしくと涙を流している。






でもりうは泣かなかった。






ふたりの顔が見えるよう抱っこしてやると、ただ小さく





「おかあさん・・・」





と声をかけただけだった。



昴はりうのその声をきいたとき、涙が込み上げて、
それから一時涙をとめることができなかった。







これからきっとりうはうちで暮らすことになる。



母を亡くした俺たちと。

両親を亡くしたりうと。





















・・・to be continue・・・

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