【book1】

□こころの、お別れ3
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思えば妙ではあった。



まだ海司と同い年のこいつが、一度も泣かないのだから。













すべてを済ませ、そしてりうを平泉家にむかえるため、
昴は家のものに車を出させて稲嶺家に向かった。





稲嶺家はマンションの一室だったが、それほど新しい建物ではなく、
いまどき下でロックを解除せずに上まで上がれる仕様であった。


もちろん家の鍵もオートロックなんかなく、鍵はりうがもっているもので開けた。







長期旅行にいくからだろう、家の中はさっぱりと片づけてある。


・・おばさん、きれい好きだったもんな・・・




感心しながら、りうと手をつないだままリビングのソファに座らせる。






いよいよか?と思ってりうの表情をみるけど、とくに変わった様子はなかった。





「りう、当面の必要なものをとって来い。
家の中のことは、今度業者をよんで整理してもらうらしいから。」










それだけ伝えたところで携帯に電話がかかってきたので、昴は玄関から出た。


「あ、父さん・・・今?りうの家だけどーーー」













家の暮らしの音と隣の公園で遊ぶ子供たちの声が聞こえている。
あの中に、りうの友達もいるのかもしれない。




ーーーーのんきな日常のたたずまいが、今は無性に癇に障る。



それにマンションのポーチは西日の差し込みがひどい。

電話を終えた昴は早々にここから立ち去ろうと思いながらドアに手を伸ばした。










ッガチャン!!!





「 !? りう?なんだ?」


ドアが開かない。

あとから部屋に入ったのは昴だし、鍵はりうが持ったままだから昴が外から閉めたわけではない。



わざわざ、中からりうが閉めたのだ。



「おい、何してんだ・・・開けろ!!」

「・・・・・」



ドンドン、とドアをたたいたりドアノブをガチャガチャしてみるが何の返答もない。



「くそっ!何考えてんだ!?」







いらだちながらマンションの管理人に電話する。

稲嶺のおじさんとおばさんが亡くなったことなど事情は説明していたから、すぐに連絡もついて鍵を開けてもらえた。


しかし今度はチェーンがかかっていて数センチしか開かない。





「おい!りう!!」


隙間から声をかけても、何をしてもこちらに応答しない。









「まいったね・・・チェーンはもう電動のこぎりかなんかで切るしか方法がないよ。
悪いね、古い設備で・・」


管理人もお手上げといった様子でどうしようもない。

警察に連絡するか、いやまず父さんに連絡して・・・












結局無理やり開けるのはよくないかもしれない、という父の意見をきいて、
少し様子をみることに決まった。








そして2日がたってしまったというわけだった。














・・・to be continue・・・

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