ダンボール戦機ウォーズ

□な
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「「わ……。」」

暫く走って、差し掛かったのは商店街。しかも、今まで見たことないくらい、変わった雰囲気の場所だ。

行き交う人々の前で立ち止まっていた星原に追いつき、俺とアオネは同時に感嘆した。

土のまま舗装されていない道に、建ち並ぶ木造建築。

俺が今まで見てきた商店街と全く違う。
ぽかーんと変わった形の家々を眺めて、ふとアオネの手がまだ離れていないことに気が付いた。

神威港からここまで走ってきたから、最初に触れたときの手のひんやり感はさすがになくなっている。
気になる女の子と手を繋いで、っていうのは、照れるけど嬉しい。


ただ………

繋ぐ、じゃなくて、【掴まれてる】っていうんだよな、これ…。

男なのになんか情けないなあ。

「………。」

「あっ、おいヒカル。」

スタスタと早足で歩き出した星原の後に続いて、アオネも歩き出した。
引っ張られるみたいに俺の足も動いて…、ちょっ、立場逆じゃない?普通大体男の方が引っ張るんじゃない?

前に出ようとしても、アオネの歩調が意外と早くて追い付けない。うまくいかないもんだなぁ。

「ついてくるな!」

「道が同じなの!
さっきからやけに避けてくるな〜。そんなにアルテミスでのこと気にしてんのか?」


……アルテミス?

アルテミス、に、星原…。


「ああーっ、思い出した!星原ヒカル!前回のアルテミス優勝プレイヤー!
どっかで聞いた事ある名前だって思ってたんだよなぁ。」

ここにきてようやく謎が解けた!
喉元辺りで突っ掛かってたモヤモヤがなくなってすっきり。

だけどここで、星原が容赦ない一言を放ってきた。

「だけど君は予選落ち。」

……う。

「さらに言えば、君が神威大門への入学条件を満たしたのは1ヶ月前。
しかも勝ち方は、相手のミスによるラッキーな勝利…。」

「えっ?何で知ってるの?」

確かにヒカルの言う通り、決勝戦では相手の操作ミスのおかげで優勝したんだけど…。
自分でも正直ちょっとあれだなぁって思ってたしアオネもこっち見てるし、あんまり触れてほしくなかった話だ。

「運も実力なんだぜ。そんなこと気にすんなよ、アラタ!」

苦い顔をしていた俺の背中を叩いて、アオネがフォローしてくれる。


何でヒカルはそんな情報を持ってたというと、一度でも入賞した事のあるプレイヤーは全てデータベースに入っているらしい。
当然アオネのデータも入っていると続けたのに対して、話をアオネの方に振ってみた。

「アオネはどうなんだ?」

「俺?まー、公式だけだと5回、かな…。アルテミスの優勝逃したのは悔しかったぜー。」

ひらひらと掌を動かしながら、アオネはため息混じりに言う。
ということは、アオネもアルテミスに参加してたってことか。ヒカルやアオネと、アルテミスで会えていたらよかったのに。

「……あんな奴等をまともに相手したからだ。」

俺達に背を向けたまま、ヒカルはぼそりとそう口にした。
首を傾げた横で、次はアオネが腕を組んで話し出す。

「誰かさんは相手しなかったおかげで絡まれて、決勝決めるバトルロワイヤルに遅刻しそうになったけどな?」

「そういう君は完全な遅刻で棄権になったじゃないか。」

「でも、目下一番の危険因子が消えて優勝。誰かにとっちゃ結果オーライだろ。」

「何が結果オーライだ。"理論壊し"だろうが何だろうが、僕は勝つ!」

「お、やっぱあんときの気にしてたのか!ヒカルー、お前いい奴だな。」

「な、なんでそうなる!勝手に納得するなっ。」

言い捨てて、ずんずんと更に早足になったヒカル。
最初はクールなやつだと思ってたけど、アオネと言い合ってるのを見てるとそうでもないのかな。
相変わらず素直じゃない奴、とアオネが笑うのが聞こえた。

「アオネとヒカルは、知り合いだったのか?」

「ああ、アルテミスで偶然会ったんだ。アラタとも会えりゃよかったのになー。そうすれば面白かったのに。」

ヒカルの後を追いかけることはせずに、二人並んでのんびり歩く。
アオネも俺と同じ事を思ってたことに喜んで、商店街の先、聳え立つ神威大門統合学園を見上げた。





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