ダンボール戦機ウォーズ

□大
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「照会完了した。転入生の瀬名アラタに、星原ヒカル……そして、勇崎アオネだな。」

「「「はい。」」」

商店街を抜けて、辿り着いた神威大門統合学園正門。
門の前に立つ警備員の確認に、三人揃って返事をする。
周囲の林の木々の中に、声は響く間もなく溶けていった。

「では、LBX……それからCCMや携帯端末などはすべてここで預からせてもらう。さあ出して。」

警備員の言葉と共に差し出された箱を見て、アラタはええっ?と首を捻る。ヒカルも何故と問いたげに警備員を見、俺は眉を寄せ口を歪めた。
学校で使うんじゃ?というアラタの尤もな質問には、必要なものは支給されるとの返答。

つーことは、LBXも支給されるってか?
流石は唯一のLBXプレイヤー育成校、使い慣れた機体から離して…ってことかな。やることが違うなあ。
そうしたら、"あの話"はやはり本当なのかもしれない。いやむしろ嘘だと逆に困るけど。

フェリーの船室でしていたように、リュウビのCCMをぎゅっと握りしめる。

「ほら、君も。」

アラタとヒカルの二人は、素直にLBXとCCMを渡していた。
ヒカルのルシファーとアラタのアキレス・ディードが、箱の中で日の光を浴びて鈍く輝いている。

二人が俺を振り返り見ている間へ歩み寄り、リュウビとCCMを警備員の持つ箱に置く。
手を離すと、微かにリュウビの顔が上がったような気がした。

(ごめんな、リュウビ。しばらくお別れだ。)

警備員にも聞こえない程度の小声で、三年以上の付き合いを経た相棒へと告げる。
そういえば、こいつには色々と改造を加えてたんだっけな。支給されるであろうLBXにもちゃんと改造を施さないと、早々に壊しかねない。忘れないようにしねえと。

箱が引っ込み、警備員の兄ちゃんによって持ち去られると、ヒカルが横で口を開いた。

「君のリュウビは改造してあったのか。どうりで、あんな戦い方をしていても無事な訳だ。」

おっと、ヒカルはリュウビの改造に気が付いたもよう。
つーか、あの僅かな時間によく気付いたな。改造、といっても、どう改造されてるのか分からないように気ぃ付けていじってんのに…。

「改造?アオネのリュウビ、どっか違ったっけ?」

アラタがにょきりと入ってきて聞く。そうさアラタ、お前の反応が俺的正答。
だけど学園でリュウビを使わない以上、手の内明かしてもノープロブレムなわけで。

「違うんだぜ〜アラタ。ま、見ただけじゃ分かりにくいようにしてあるから、気付かなくて当然なんだけどな!」

「すげー!アオネ、LBXの改造もできるのか!!
…あれ、誰か来た。」

目を輝かせていたアラタがきょとんと俺の後ろを見て言い、正門に背を向けるようにして立っていた俺とヒカルはアラタの視線の先へ首を回す。

門の向こう…学園の敷地内から歩いてきたその人は、俺達と目が合うと微笑んだ。

「あら、ユーたちが今日から入ると言う転入生ね?」

なんだこのオネエ、何者だよ。

ついつい心の中でそう疑問をぶつけると、答えはもう一人の警備員が言ってくれた。

「ジョセフィーヌ学園長!わざわざお出でにならなくとも、自分達が執り行います故、ご安心を。」


学 園 長 か!!

こりゃまた個性的すぎる学園長だなー!!顔と名前の一致が一発だぜ(助かる)。
あと男…だよな?何で名前がジョセフィーヌだよ、親大丈夫か、赤ん坊の頃は女の子と見まごうほどだったのか。こほん、まぁいいや、ツッコミ始めたらキリ無い気がしてきた。

「うふふ、そう言わずに。ミーの楽しみなんだから。」

ふむ、生徒に友好的なお人っぽいな。こういう人が学園長なら、学校生活は安泰かも。
黙った警備員からこちらに向き直った学園長は、再び笑顔を浮かべて口を開いた。

「アラたんにヒー君、それにアオちゃん。よ・う・こ・そ!神威大門統合学園へ。
ミーが学園長のジョセフィーヌよ。」

いきなりあだ名呼びか!!すごいな、生徒との距離一気に詰めてきた!!

「ヒ、……ヒー君?」

まさかの呼び名にヒカルが顔をひきつらせる。
俺だけなんか呼び方平凡…、じゃねくて。

「ヒカルの事だよ、きっと。」

「君にヒカルと呼び捨てにされる理由も無い!」

横から笑顔で言ったアラタにヒカルが突っ掛かる。

「さっきから俺は呼び捨てだったじゃねえか。差別は良くないぞっ、ヒー君。」

「そうだぞヒカルー。」

「うるさい!ヒー君呼ぶな!!」

のしっとヒカルの肩に肘を乗せながら茶化したら、アラタと一緒に怒られた。でも本気で怒ってる訳じゃないのは分かるもんな、素直じゃねーの。

怒るヒカルと悪びれないアラタ、そしてニヤニヤしながらヒカルを宥める俺を見て、学園長はくすくす笑った。

「みんな元気ね。気に入ったわぁ。でも、これからアラたんとヒー君は仲間なんだから仲良くしなきゃダメよ!」

「仲間?」

ヒカルの目が怪訝そうに学園長に向けられる。
そう!と手を叩いた学園長は続けて、ヒカルとアラタの二人はは2年5組に入ってもらうと告げた。

「ヒカル!仲良くしようぜ!」

アラタが元気にそう言うも、ヒカルは黙ってそっぽを向く。
本当は嬉しいくせに、という言葉は引っ込めて、じゃあ俺は何組だ。

「あれ、アオネも一緒じゃないの?」

「アオちゃんはぁ。3組よ。」

学園長が言ったとたん、アラタの肩ががっくりと落ちた。おおう何だい少年、何があった。

「そんなぁ…。折角仲良くなれたのに……。」

「クラス違うくれーでそこまで落ち込まんでも…。大丈夫、いつでも会えるさ。」

ぽんぽん、と背中を叩きながらそう慰めると、アラタはそれもそうだとばかりに顔を上げる。

「じゃ、じゃあアオネ!3組に、会いに行ってもいいかな?」

「おう、もちろんさ。いつでも来いよ。」

他のクラスの友達が、自分とこに訪ねてくるという感覚は好きだ。転入してきたその日にそんな友達ができたんだと考えると、何だか楽しい。笑顔でアラタにOKを出すと、手放しで喜ばれた。
うーん、さながら犬だな。ああ、悪い意味じゃなく。

「さ、早くそれぞれのクラスに向かいなさい。丁度、今はホームルームの時間だから急いでね。」

「「「はい。」」」

三人でハモった返事が、さぁっと吹いた風に乗り流れていった。



(そうそう、ヒカルも来て良いんだからな―!)

(…さっきから馴れ馴れしいぞ。……この島には、こんな人たちばかりなのか?)



――――――――――

中々本題に入れない…。
 

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