Life goes on !
□こんにちは、新世界
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ピピピピピピピピ………
気持ちよく眠っている耳元で、けたたましいデジタル音。
目を開けず、それを手で探って止める。
背中がいやに冷たく固く、痛い。
「 ……… 」
朝にすこぶる弱いあたしは、まだ脳ミソが目覚めない。
あれ、昨日川に落ちた気がしたのに、どうやって家に帰ったのだろうか?
「 ………はっ! 」
腹筋を駆使して、勢いよく起き上がる。
「 ………ノーモア遅刻!!!」
そう、今日遅刻してしまうと完全にクビを切られる。会社に。
眠い脳ミソを起こすため、物理的な衝撃を与える。つまり、自分で自分の頭をグーで殴る。
「 ………ってぇ 」思ったより、痛かった。
と、ここまでしたところで、昨日の記憶が蘇る。
「 しまった!攫われた!? 」
身体の至るところをチェックする。
何よりも先に確認したのは足元。
よかった、A・Tちゃんと履いてる。
そう。昨日。
あたしは武内兄弟と遭遇し、バトルに発展。勝ち目がなさそうだったので、なんとか逃亡しようとしたが、A・Tが急に故障、停止。(アホなあたしがメンテナンスを怠ったせいだ)バランスを崩し、橋の上から川へ転落したのだ。
冷たい水の感覚ははっきりと覚えている。
いやぁ、完全に終ったと思ったのだけど。
大方、先に川に船を待機させておいて、落ちてすぐ回収させた、といったところだろう。
なんて用意周到。
「 さて………どうするかね 」
会社は、もうクビ確定だ。
くそっ、あいつら責任とってくれるんだろうな!?一生楽して暮らせる位の援助してくれるんだったら許してやってもいいよ!
しかし、今うまく逃げ出せたら、まだ間に合うかも知れない。
あたしは、部屋を見回す。
すすけた、廃墟のようである。
ベッドルームと思われる部屋の床で、あたしは寝ていた。
出入り口はひとつ。古びた木のドア。
その先に人の気配などはないが………
あたしは、そのドアにそぉっと近づく。
少し歩いたところで、自分の着ている服の変化に気付いた。
「 ………はい? 」
自分の口から、間の抜けた声が漏れる。
丁度良いところに姿見があったので、埃を拭い自分の姿を確認する。
金色のボタンがワンポイントの黒いブレザー。中にグレーのブラウス、首元にはえんじ色のネクタイ。
そして、極めつけは膝より少し短い丈の黒い、プ、プリーツスカート!?
見慣れた、けど少し懐かしい服装。
「 女子高生かっ! 」
思わず、鏡に写った自分に突っ込んだ。通ってた高校の制服だった。
「 JKかっ! 」
2回突っ込んだ。
因みに足元は黒タイツの上に短パン着用。そして、A・T。
「 あんのっ、下ネタ兄弟………あたしにこんなコスプレさせて、なにしたいんだ! 」
悪態を吐きつつ、ふと胸元に手をやる。
「 ……… 」
むにむにむにと、それを揉む。
「 ………! 」
ないっ!あたしのちょっとした自慢の、D様がなくなってる!?
「 ちょっ、な!?どこに落とっ………」
なんか、若干背も低くなってる気がする!あ、髪の毛も背中までのロングだ。
これは………これは紛うことなき、
「 ………じょ、女子高生のころの、あたし?若返った、」
絶句。
一体あいつらあたしに何をした?
「 そうだ! 」
さっきのドアに近づき、一気に開ける。
人はやっぱりいない。
足早に外へ出てみる。どうやらここは2階のようで、下へ続く階段があった。
降りてみる。
もう、何年も使われていない家屋のようで、至るところに埃が積もりまくっている。誰かが入った痕跡はなく、まるであたしが初めて通るかのようだ。
窓がいくつかあったが、一部外側から割られていた。
益々自分が置かれている状況がわからなくなった。
外へ続くらしいドアに手をかける。
開くと、明るい日の光が差し、眩しくて目を細める。どうやら外は晴天。
手をかざし、ゆっくり目をあける。広がる風景は───
「 ………え?か、海外までとばされたぁぁぁぁぁっ!? 」
まるで映画のセットのような、石造りの街並みだった。