dream

□君の笑顔を
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思えば、俺は昔から「恋愛」なんてものとは縁が無かったように思う。


スクールに通っていた頃から、俺は何故だか人に囲まれることが多かった。誰かに「モテるんだな」と言われた記憶があるが、俺自身、そんなんじゃないと思っている。
俺の父親はリングランドの市長をしていて、多分、俺に近寄ってくるような人達は皆「市長の息子と仲良くしておきたい」っていうのが大半だろう。そう、誰も俺を俺としては好きになっていないんだ。

友人であるハルには「かなりの女性達に好意を持たれているな」なんて言われた。そんなんじゃないよと返していたが、それならどうして、そんな簡単に好きになんてなれるんだろうか。と考えてしまう。
自分は彼女達と親しい訳でもないし特別親しくしようとも思わない。悪い言い方にはなるけど、俺は彼女達の気持ちが理解できなかった。


…でも、父の依頼の件で名無しちゃんと行動を共にするようになって、初めてその気持ちが分かったような気がしたんだ。


俺と正面から向かってきてくれる彼女に、いつからか目が離せなくなっていた。彼女の近くで笑っていたい、笑顔を見たい、触れたいという感情ばかりが胸を支配する。
だけど、
俺が彼女の髪に触れる度、笑いかける度にあの子が見せる寂しそうな笑顔に、胸がしめつけられた。


ねぇ、どうしてそんな寂しそうな顔をするの?俺じゃ、君のあの綺麗な笑顔は見れないの?


(俺はもう、君しか見えないのに。大切にするから、だから)


俺に、君の笑顔を見せて?


end.

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