dream

□Aquarium
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 ※ Attention! ※


 この小説には、配信中のリュカ本編と分岐(Pearl)ルートのネタバレが含まれています。

 現在リュカ本編を攻略中な方や、多少でもネタバレが苦手な方は読まないことをお勧めします…。




―――――――

( 名無し side)





――11月15日。クロムウェル家の自室で、ベッドサイドに腰掛けていた私は深い溜息を吐いた。


11月21日は、恋人のリュカの誕生日で。それを知ったのはついさっき。
いつものように『ブルーベル』へ迎えに来てくれたリュカと、クロムウェル家への帰路を歩いていた時だった。



「え…リュカの誕生日、もうすぐだったの?」
「あー、うん。そういえば、名無しにはまだ言ってなかったんだっけ…」


驚いたように問う私に、リュカは苦笑しながらごめん、と呟いた。

「ううん、リュカが謝ることはないよ! ……ただ、」
「? ただ?」
「…当日、お店休ませて貰えるか、心配だなって」

今、『ブルーベル』で働いているのはアレクと私とマネージャーのハルさんの3人。でもハルさんはクロムウェル家の執事の仕事もある為に、実際はアレクと私の2人だけだ。
『ブルーベル』はただでさえ人気なお店で忙しい日も多いのに、リュカの誕生日とはいえ休暇を貰っていいものか迷ってしまう。

少し俯き気味に呟いた私に、リュカはくすりと小さく笑った。

「ああ、それなら心配しないで。ちゃんとアレクからは、許可貰っといたから」
「え…!?」

あっさりとそう口にしたリュカを思わず見上げると、リュカは少し照れくさそうに頬を掻いた。

「その、付き合ってから初めての誕生日だし……。俺も、やっぱり、名無しと1日過ごしたいなって思って……」
「リュカ……」
「お店の方は、当日だけハルに手伝ってもらうから大丈夫だって言ってたし。心配しなくてもいいって」
「そっか…ありがとう、リュカ」
「ううん。むしろ、勝手なことしちゃったかなって思ってたから…名無しがそう考えてくれただけでも嬉しいよ」

そう言って微笑んだリュカにつられ、私も微笑む。
そうして話すうちにクロムウェル家まで送ってもらった私は、リュカと別れて自室に戻るなり溜息をついてしまっていた。


「……誕生日プレゼント、どうしよう」


さっきリュカと話している中、ずっと考えていた、リュカへ渡す誕生日プレゼント。優しいリュカのことだからきっと、私から貰うものなら何でも嬉しいとか言ってくれるだろうけど……やっぱり、リュカの喜ぶ顔が見たい。

何がいいんだろう…? リュカって音楽が好きだし、蓄音機とか、レコード? でも私の持ってるお金なんかじゃ買うこと自体難しいし……

考えれば考えるほど、頭を抱えてしまいたくなる。

どうしようかと悩む中、ふと視線をあげると、視界に入ったのは以前リュカが送ってくれたアクアリウム。
…これを送ってもらったのは、正直、お互いにバタバタしてしまっていた時――マシウスと治安判事が組んでリュカにかけられた罪を、無罪だと証明する為に動き回っていた頃――だから、じっくりと眺めて楽しむ余裕もなかった。そっと近づいてアクアリウムを覗いてみると、色とりどりの綺麗な魚たちが水槽の中で泳いでいて、私は小さく笑みをこぼした。

そしてふと浮かんだのは、まだリュカと付き合う前に2人で出掛けた、あの海で。

まだ時間はあるんだし、ちゃんと、リュカの喜びそうなプレゼントを選ぼう。

そう思いながら、私はアクアリウムを眺めていた。



そして翌日から毎日、仕事の休憩時間になる度に雑貨屋へ来た私は、リュカへ渡すプレゼントを考えながら店内を回っていた。だけどなかなか、これだと思うものが見つからない。
今日来ているお店で、3軒目になっていた。

「うーん…どうしよう……」

誕生日まで日にちもあまりないし……もう雑貨用品等は諦めて、別のものを探すしかないのかな…と、店内を回りながら考え、肩を落として店を出ようと出入口へ向かおうとした時、
視界の端で、とあるものが目に入った。



「……あ…――」






( Lucas side)


「行きたいところ…?」
『うん。いきなりで悪いんだけど……ダメかな?』


11月20日の夜。アパートメントに帰るなり電話のベルが響き、受話器を取ると、相手は恋人の名無しだった。
明日は行きたい場所があるから、俺も一緒にそこに行ってもらってもいいかという内容で。申し訳無さそうな名無しの声を聞くと――聞かなくてもだろうけど――、嫌だ、なんて言えるはずもない。
俺が大丈夫だと伝えると、安心したようにお礼を言う名無しと待ち合わせの場所などを話し合い、静かに受話器を置いた。



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