世界の終わりと癒しの歌

□【共通】はじまり
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これは、とても悲しい戦争のお話...

そのシナリオの上...とても可憐な歌姫が居た



















両親が殺されたあの日、私はこの世界が刻む終焉への物語の上にいた。
AKUMA...その存在に気づいた初めての日、私は故郷を捨てた。

愛する母と愛する父の体はもうどこにも無い...


こんなただの人間である私に何ができるのだろう...街中をさまよいながら私はそんなことばかり考えていたと思う。


ふと立ち寄った公園で華奢な体つきの踊り子が踊っていた

美しい

素直な感想、人間なら誰もが感じることのできる感情だ、それなのにその感情に気づいた私はひどく驚いた。

何故なら、母と父を亡くしたあの日から、どこに行ってもそんな感情は微塵も感じなかったからだった。


お腹が空いた、寒い、暑い、眠い
そんな、生理的欲求は感じる事が出来たけど...嬉しい、悲しい、愛おしい、辛い
そんな、感情的はあの日から一度も感じていなかった。

だから驚いたし、こんなにも切なくなるのだ。

感情が戻って来てしまえば、思い出したくないことまで思い出してしまうから。
思い出してしまったら、愛おしさと恋しさで潰れてしまいそうになる。


美しい踊り子も、ざわついていた民衆も今は涙であまり見えない...
心臓が傷みを帯びる...殴られてもいないのに...壊れてしまいそうになる...

母さん、父さん...なんで、私も一緒に連れて行ってくれなかったの...?
母さんと父さんの傍に居たかったよ...


「......貴方...大丈夫?」

いつの間にか蹲り泣いてしまったのだろう、私を見下ろしていたのは綺麗で美しい踊り子だった。

なんとか涙を拭い、呼吸を整えてから踊り子に声を放つ。

「大丈夫よ...貴女の踊りとても美しか...った......あり...がとっ...」


涙で声が途切れ途切れになってしまったが、きっと伝わったのだろう彼女はとても可愛らしい笑顔を私に向けて民衆の輪の中へ戻っていった。

踊り子が地を蹴り、ひらひらの衣装を翻しながら舞う
その姿を見て声が勝手に口から出てしまたのだった...


美しい声が空気を揺らし、民衆や踊り子の鼓膜をたたく、
誰もがもっと聞きたいと思うこんな歌声のほうへ振り向くと先ほどまで泣いていた少女の姿がそこにはあった。


自分が歌いたいと思ったメロディーに自分の声を乗せる...歌詞なんてない
ただ、声を発するだけ...それで心の霧が晴れる気がした...
今はただ、何も考えず感じず声を出したかった...


何も考えずにいると、歓声が聞こえ目を開ける、そこには先ほどの踊り子が自分の声が奏でるメロディーに身を委ね、踊っている姿が見えた


楽しい時間も終わり、私が歌うのを止めると辺りは歓声の海だった。


目があった踊り子に助けてくれと目くばせするも踊り子は焦っている私を見てただ微笑むだけだった。



う...うぅ...

ふとうめき声が聞こえ声のする方を見ると地面に膝をつけたお婆さんの姿があった
急いで駆け寄り声をかけるといきなり手を掴まれお婆さんは静かに涙を流した

「綺麗な...歌を......ありがとうねぇ.........この世界で生きてきて...一番美しい......歌声だった...
本当にありがとう...」

そう言ってお婆さんはいきなり砂になり消えてしまったのだった...


逃げていく民衆の後姿を見送り、踊り子が居た場所を見ると真っ黒い紙切れが置いてあるだけだった

「なんだろうこれ...」

拾い上げて二つ折りの紙を広げると


ミツケタ


とただそれだけ書いてあった。


おかしいなと思い紙をポケットに入れ、先ほどまでお婆さんが居た場所を見る。

そして、胸の前で十字を切って歌姫はその場を後にした...
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