世界の終わりと癒しの歌
□【共通】信頼
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「歌姫〜!ここの分析頼んでいいか〜?」
「おい、歌姫!
手合わせはどうなった!」
「ねぇ、歌姫街に買い物に出ない?」
「歌姫!聞いてよぉ〜!
神田ったら、蕎麦しか食べないのよぉ〜!不健康だとおもわなぁい!?」
歌姫がここへ来て早くも二年が経とうとしています。
皆は歌姫の事を深く深く信頼し、愛していました。でも最近歌姫は酷く落ち込んでいます。聖戦と呼ばれる戦争が激化したのです。
アクマの数が激的に増え毎日毎日何十人もの死者を出します。
そしてさらに一ヶ月後、長期の任務から帰って来たリナリーが大怪我を負って帰ってきました。
所々に巻かれている包帯は痛々しく緩み、きちんとした治療も受けずリナリーは、大聖堂で泣き続けます。
「リナ………医務室に戻ろう?」
リナリーに喋りかけた私の顔をじっと見てリナリーは涙を流す。可愛い顔が痛々しくゆがむ姿に、私は悔しさに目を細めた。
「歌姫っ………守れなくてごめんなさいっ…………お願い……皆のために歌って……お願い…歌って……」
「謝る事ないのリナリー……連れて帰って来てくれただけで……守ろうと頑張ってくれてありがとう」
泣き声で溢れかえっていた大聖堂で、歌姫が歌う。その瞬間に大聖堂は、シーンと静まり返り、"なんで死んじまったんだ"という嘆きから"よかったな、次の人生では幸せにやれよ"と言う嘆きに変わった。
「ありがとう……歌姫……」
「リナリー、お願い、医務室に行こう……?」
リナリーをゆっくり立たせ、私は医務室へと向かった。
医務室へ付くと、ここも悲惨な状況だった。
「婦長……リナリーをお願い…」
「ええ…わかったわ……
さぁ、リナリーこっちよ…」
婦長によって連れていかれるリナリーを見送り私は医務室を出た。
「コムイ……私は弱いわ…」
「弱くなんかない……君の任務で死んだ仲間はいないじゃないか…君は精一杯守ってくれているよ……
リナリーの事も、死んでしまった仲間のために歌ってくれた事も、ありがとう……」
前を向いて、お互いの顔を見ずに話す2人の顔はとても辛そうな顔だった。
明日から、みんなでゆっくり回復して行こう。
身体を休めて、空腹を満たせばみんな明るくやっていけるよ…
「そうだ、新しいエクソシストが入ったから見かけたら挨拶してね」
「わかったわ!」
その日私は何処へも寄らず部屋に帰った。