甘い短い物語

□【D灰/ラビ】ちょっと微熱の…
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「ラビ、名無しさんが倒れた。」


朝一でそう言われた俺は呆然とコムイの顔を凝視した。


「は!?なんで!?」

名無しさんに、任務は入っていなかったし、最近は読書やらリナリーとお喋りやら好きな事をしていた名無しさんに何があったのか、俺は無償に不安になった。


「倒れてから忙しくて会いにいけてないから原因はわからないんだ、だからラビ!
僕の代わりに名無しさんの様子を…」

様子を見に行って。そう言おうとしたコムイを無視してラビは指令室からかけ出した。



教団は無駄に広い。
だから指令室から出て早5分まだ医務室は見えてこない。

イライラと焦りが俺を支配して、俺の額からは冷たい汗が流れた。

名無しさんは、出会った時から危うい存在だった。
美しくて気品漂った彼女はいつか俺らの前から…いや俺の前から姿を消してしまいそうで怖かった。

だから、今回名無しさんが倒れたのは別れの前兆の様で…俺をとことん不安にさせた。


やっとで医務室が見えて来て、俺はノックもせずに扉を開けた。




「ケホケホ…


あら、ラビきてくれたの?」

名無しさんは、赤らめた頬のまま俺を見るととびきりの笑顔を見せた。


「……」


「ラビ?
…どうしたの?」
俺の異変に気づいたらしい名無しさんは、俺の顔を覗き込む。

その行動でさえも俺を安心させた。

「よかったさ……俺名無しさんが居なくなっちまうんじゃねーかってすげー心配で…」


そう言葉を発すると名無しさんは俺の頭を撫でた。



その瞬間に俺の不安や焦りは弾け飛んで愛おしさへと変わった。

有無を言わさず抱きしめると、名無しさんは少しだけビックリして俺の背に腕を回した。



名無しさんの体温が高いのがわかる。
いつもは俺の方が数倍熱いのに、今日は名無しさんの方が熱い。


密着している身体から伝わる熱が鼓動が俺を安心させてくれた。



「名無しさん…何処にも行かんで…」



弱々しく発したその言葉は俺を情けなくして、名無しさんは愛おしそうに微笑んだ。
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